中国史上最大のUFO事件”空中怪車”

中国史上最大規模のUFO事件

中国南部・貴州省の貴陽が中国語国内屈指のUFO多発地帯であることは別の記事でも紹介した。貴陽ではUFOの目撃情報は大した話題にならないほど日常的な話なのだ。

1994年、貴陽の住民をも震撼させた中国史上最大規模のUFO事件が発生した。後に中国三大UFO事件のひとつと呼ばれるようになる空中怪車事件である。

まだ人々が寝静まっていた12月1日の午前3時ころ、貴陽市の北18キロほどのところにある森林地帯で突然奇妙な音が鳴り響いた。

それは誰も聞いたことがないほどの大きな轟音であった。強烈な台風をさらに増幅したかのような風圧で家が揺らぐような感じがしたという証言もある。

日が昇ると驚くべき事態が発生していた。

森林地帯の樹木が広範囲にわたってなぎ倒されていたのだ。被害区域の全長はおよそ3キロメートル、幅は150メートルから300メートルの細長い領域だった。総面積はサッカー場37個分に相当するという。

事件当時の様子

付近の住民たちが聞いた夜間の爆音は、森林をなぎ倒した何者かが発した音だったのだ。

倒された樹木の太さは直径20センチから30センチのものが多かった。それだけの太さの木が高さ1.5から4メートルくらいのところで西に向かって折れていたのだ。

不思議なことに被害が生じた区域の外側の樹木は全く被害を受けていなかった。自然に発生する突風ではこのような折れ方は考えられない。

事件が発生した森の近くには列車工場があった。

この工場でも信じられない現象が発見された。爆音が轟いた夜に敷地内の金属製のパイプが破断し、50トンもの重量がある車両が勾配に逆らって20メートルも移動していたのだ。

強力な外力が工場を襲ったとしか考えられないが、不思議なことに電線や付近の動物には全く被害がなかったのだ。

謎に満ちた事件の原因

事件発生の直後からこの怪現象の原因について論争が巻き起こった。

最初に提唱されたのは竜巻説である。付近の住民の証言の中には強い風が吹いたとの証言があったので、強力な竜巻が森林をなぎ倒したという説にはそれなりの説得力がある。

しかし竜巻の風は回転している。このことは樹木が一方向になぎ倒されていた事実と矛盾するのだ。

しかも地理的な条件から判断すると事件が発生した地域では竜巻は発生しないというのだ。実際に過去の気象データを確認したところ、竜巻の発生は一度も記録されていなかった。

次に提唱されたのはダウンバースト説である。

ダウンバーストの場合は気流が回転しないので樹木が西に向かって倒れていた事実をうまく説明できる。

しかしダウンバースト説にも弱点があった。ダウンバーストの場合には夜間に住民が聞いたような轟音は発生しないというのだ。被害現場を視察した専門家は、森林破壊の状況はダウンバーストでは説明できないと結論付けている。

そもそも風による被害にしては不可解な点が多すぎる。列車工場で金属の塊とも言うべき車両が大きく影響を受けていたことから、磁場または電場の影響が検討された。その中から静電気説が提唱されたのだ。

しかし静電気説では樹木に被害が生じた理由が説明できない。またそもそも巨大な車両を動かすほどの静電気が自然発生するという前提自体にも疑問が投げかけられている。

竜巻説、ダウンバースト説、静電気説はいずれも空中怪車事件は自然現象であるとする立場だ。

これらの説とは全く異なる説も提唱されている。それはUFOが関与したと考える立場からの説明である。

多数の目撃証言

実は爆音が鳴り響いた夜にかなり多くの人たちがUFOを目撃しているのだ。爆音で目を覚ました人たちが屋外で何が起きたのか確認するために家の外を見ていたからだ。

ある人物は轟音とともに閃光を見たと証言している。また別の人物は火の玉のような光が北から南に向かって飛行するのを見たと証言している。

太陽の20倍くらいの大きさの赤い光が地上を転がるように移動するのを見たという人物もいる。それはほんの一瞬の出来事だったそうだ。

地上10メートルほどの高さをほうき星のような光が飛行するのを見た人物もいる。その光を見た直後に彼の家は停電したそうだ。日が昇ってから原因を調べたところ変電装置が焼き切れていたという。

轟音が響いた夜のUFO目撃証言は数十件も記録されている。これだけの状況証拠がある以上、空中怪車事件にUFOが関与していると考えること自体はむしろ当然であろう。

ただしUFO説に対しては多くの人が「UFOが現れるとなぜ森林が破壊されるのか」という疑問を呈している。確かにUFOが現れたからといって森林が被害を受ける必然性は全くないのだ。

当然UFO説の提唱者もその点を検討している。

彼らはUFOの出現そのものが事件の原因なのではなく、事件発生時にUFOの側に何らかの異常事態が発生していたと考えている。

異常事態とは具体的にはUFOの故障や操縦ミスなどである。本来なら高高度を飛行するはずのUFOが何らかの事情で地上に異常接近し、その影響で森林がなぎ倒されたというのだ。

今も残る事件の跡

確かに細長い区域が被害に遭っていることから、何らかの飛行物体が地上すれすれを滑るように通過した可能性は否定できない。

しかしUFOは何の証拠も残していない。本当にUFOが関与していたのか、UFOが関与していたとして、実際にはどのように被害を生じさせたのか。全ては謎なのだ。空中怪車事件は限りなく黒に近いグレーなUFO事件なのである。