死体遺棄手段としての「煮込み」

湖南省株洲市

毛沢東の出身地として有名な湖南省。古くは炎帝が五穀を栽培し、布を織り、陶器を作成したとされる中華文明発祥の地だ。

湖南省の北東部に株洲という街がある。株洲市はかつて建寧と呼ばれていたが、南宋のころから株洲と呼ばれるようになった。

洲の字は古来より長江支流の湘水両岸の街に用いられてきた。その名のとおり株洲には大きく蛇行する湘水(湘江)が流れている。

現在の株洲市は湘水の両岸にビルが立ち並ぶ大都市である。

通報

2012年11月。株洲市荷塘公安分局の桂花路派出所に民間人からの通報が入った。2日前から妻が行方不明だというのである。

夫の証言によると妻が失踪した日の晩に何度も携帯電話に電話をかけたが全く応答はなかったという。

奇妙なことに同日の夜8時ごろ、姉の夫に対して「姉さん、用事ができたのでちょっと出かけます。すぐに戻ります」とのショートメッセージが入っていた。

姉の「夫」に対して「姉さん」と呼びかけている点が不自然である。

しかし失踪した女性の家族には思い当たるフシがあった。実は姉の夫が使っている携帯番号は半年前まで姉自身が使っていた番号だったのだ。

つまりこの事情を知らない誰かが偽装工作をしている可能性が強いのである。

さらに通報した人物の妻が普段使っている乗用車は自宅付近に駐車してあり、どこかに出かけたとは考えられなかった。

何らかの事件に巻き込まれたと判断した警察は捜索を開始した。

犯人逮捕

失踪した女性は事業を営む非常に裕福な人物であった。高価なな装飾品を身につけ、バッグには常に少なくとも1万元(日本円で20万円弱)を入れていたという。

この女性はギャンブルに目がなく、雀荘に入り浸っていた。女性の最後の目撃証言も雀荘から得られたのである。

警察は雀荘での人間関係から容疑者を絞り込み、ついに犯人を特定して逮捕にこぎつけたのである。

逮捕されたのは窃盗と薬物事犯で逮捕歴のある2名の男であった。

2人は不動産を買い取りたいとの名目で女性を誘い出し、携帯していた現金と宝飾品を奪った上で殺害していたのだ。

ここまでならこの事件は中国全土の注目を集めることはなかったはずだ。しかしこの先が異常なのである。

不気味な死体の処理

2人は犯行を隠蔽するために死体を隠蔽する工作を行った。その方法が何とも不気味なのだ。

2人は包丁と金槌を使って死体をバラバラに切り分けた。その上で死体を圧力鍋で煮たというのだ。不気味なことに煮る際には八角や桂皮などのスパイスを加えていたという。これは匂いを消すためだったのかもしれない。

2人は死体を煮込むのに3日を費やした。この結果、死体の肉は完全に溶けていたという。骨も相当に脆くなっていたと考えられる。

その後2人は衣服と所持品を焼却し、煮あがった死体を数ヶ所に分けて投棄したのである。

犯人たちは前科のせいで定職に就けず、強盗の機会を虎視眈々とうかがっていたらしい。そのふたりにとって、大金を持って雀荘に出入りしていた被害者は格好のターゲットになってしまったのだ。

賭博場に等しい所で富を見せびらかすことは、いくら見栄の文化を誇る中国であっても、あまりにもリスクが大きすぎたようである。

再び煮られた死体

死体を圧力鍋で煮るなどという犯罪は極めて異常な行為のように思われるが類似の事件が発生している。

2015年のことである。浙江省の嘉興という街で失踪事件が起きた。夫婦に子供ひとりという家庭の妻が突然姿を消したのである。夫には「商売を始めるので出かける」と言っていたそうだ。

それはちょうど春節の時期であった。中国ではよほどの事情がない限り春節は家族と一緒に過ごし、互いに挨拶するのが当然である。それなのに妻の家族には何の連絡もなかった。

不審に思った家族が夫に詳細を尋ねたところ、夫も妻の所在を知らないと言うのだ。

そうこうするうちに妻の妹にショートメールが入った。姉の携帯からだ。これが反って不信感を招いた。

姉は用事があれば電話をかけるタイプの女性だった。ショートメールを使うことは滅多にない。しかもショートメールを打つ時に誤字を使うことはなかった。しかしそのメールには初歩的な誤字がいくつも散らばっていたのだ。

妹はその日のうちに警察に通報した。この事件でもショートメールを使った偽装工作の結果、返って墓穴を掘る結果になったのだ。

姉の携帯からメールを打てる人物は誰か。先ず第一に夫が疑われる。

取り調べの結果夫は妻を殺害したことを自白したのである。

二人の家庭ではふだんから夫婦喧嘩が絶えなかったそうだ。殺害当日も口論となり、激高した夫は妻の首を絞めて殺してしまったのである。

その後死体をバラバラにしたうえに圧力鍋で煮たというのだ。

弁護人は喧嘩の最中に最初に手を出したのは妻の側であるとか、普段から妻が暴力を振るっていたなどと主張して情状酌量を求めていたが、裁判所は死体処理の方法が「特別残忍」であり、情状は「特別悪劣」と判断して死刑判決を下している。

 

Posted by 編集長

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