浮かび上がった死体
1982年2月11日、香港・沙田の城門河で、切断された女性の頭部と両腕が発見された。
警察の捜査により、被害者は22歳の水商売の女性Cであることが判明した。
何者かが女性を殺害し、遺体を解体したことは明らかであった。
水商売の女性は人間関係が複雑である。交際範囲が広く、その一部は秘密にされていることも多い。
犯人は殺害、解体、遺棄のどこかの場面で証拠を残しているはずだが、捜査は難航していた。
不気味な写真
1982年8月18日、香港島の中心部湾仔の写真館で、客が持ち込んがフィルムを技師が現像していた。
写真に浮かび上がった画像を見た技師は手を止めた。
そこには女性の遺体を解体しているシーンが写し出されていた。
フィルムを持ち込んだ客は、数か月前から、たびたびその写真館に現像を依頼していた男だ。
その客は自分自身を火葬場の撮影技師であると言っていた。仕事柄、解剖学者のために写真撮影を手伝うことがあるという話をしていたそうだ。
その客が持ち込むフィルムには女性器が写っていることが多かったという。
以上のような話を聞いていた技師は、遺体の解体場面が写っている写真を見ても特に驚かなかったそうだ。
技師から不気味な写真の話を聞いた写真館の主人は、2月に発生したバラバラ殺人事件のニュースを思い出した。
万が一ということもある。写真館の主人は念のため警察に通報した。
家宅捜索
通報を受けた警察は張り込みを開始し、現像した写真を受け取りに来た男を逮捕した。
それは27歳のタクシー運転手Lという男だった。
警察はLの自宅を捜索した。
Lの部屋からは膨大な写真とビデオテープが発見された。
それらのメディアには女性の裸体、Lが女性の遺体を屍姦している場面、Lが女性の遺体を解体している場面などが写っていた。
これらの発見は捜査員の想定の範囲を超えていた。写真には複数の女性が写っていたからだ。
映像の他にも、遺体解体に使われた工具、撮影機材も発見された。
しかしさらに驚くべき発見があった。
ホルマリンに漬けられた女性器の標本が複数保管されていたのだ。
身柄を拘束されたLは事件についての供述を始めた。
第1の殺人
最初の被害者は城門河で発見されたCであった。
1982年2月4日の午前4時、仕事を終えたCは友人たちと軽く酒を飲んだ後、尖沙嘴(九龍半島南端の繁華街)でLが運転するタクシーに乗車した。
Lは途中で自宅に戻り、電線を持ってタクシーに戻って来た。そしてその電線でCの首を絞めて殺害したのである。
なぜこのような経過を辿ったのか不可解ではあるが、恐らくCはタクシーの中で寝ていて、タクシーが指定した目的地に向かっていないことに気がつかなかったのだろう。
Cを殺害したLはCの遺体を自宅に運び入れた。
驚くべきことにLはひとり暮らしではなかった。
LはCの遺体を父親の部屋に運んだ。その日、父親は家にいなかったからだ。
次の日、家族が全員出勤するのを待って、LはCの遺体を自分の部屋に運んだ。
遺体を全裸にしたLは、写真を撮り、屍姦ビデオを撮影した。
その後ナイフで生殖器官を抉り取り、ホルマリンに漬けて保存している。
これが本当に初めての犯行だったのだろうか?
準備が整いすぎているようにも思われる。
LはCのバッグから現金を取り出して外出した。
奪ったカネで電ノコを購入したLは、部屋に戻りCの体を7分割してビニール袋に入れた。
その晩、Lは解体した遺体を城門河に遺棄している。
この犯行についてLは全く罪悪感を感じていなかった。反省も後悔もしていなかった。それどころか、売春婦は死んだほうがよい、俺が天に代わって裁きを下したなどと主張したそうだ。
第2の殺人
ふたり目の被害者は31歳のレジ係であった。やはりイニシャルはCである。
5月29日の早朝、香港には大粒の雨が降っていた。
Cは帰宅するためにLのタクシーに乗車した。
Lは途中で車を停め、刃物で脅迫して自由を奪い、用意していた手錠でCを拘束した。
そしてCの首を電線で絞めて殺害したのである。その後の経過は第1の犯行と同じである。
Posted by Liu XiangHai
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