双星村
重慶の東に温泉で有名な東泉鎮という土地がある。日本の温泉も山の中にあることが多いが東泉鎮も山深い土地である。
その東泉鎮に双星村という村がある。温泉場とは離れた人家もまばらな村である。
2009年11月5日の昼ごろのことである。
遠方へ出稼ぎに出ていたKは双星村の自宅に向かっていた。自宅に残している13歳のひとり息子に生活費を届けるためだ。この日に村に戻ったのは特殊な事情によるのだが、それについては後述する。
自宅に戻ったKは不気味な予感を感じていたという。いつもなら開いているはずの表門が閉じていたからだ。
中に向かって呼びかけても応答がないのでKは裏門に回った。ふだんなら鍵がかかっているはずの裏門は軽く押すだけで簡単に開いた。
足を踏み入れたKは驚愕した。目の前にひとり息子の死体がぶら下がっていたからだ。
異様な死体
梁からぶら下がるその死体は極めて異常な姿をしていた。真っ赤な女性もののワンピースを着用していたのだ。
この事件が中国では一般的に「紅衣」男孩事件と呼ばれるのは、事件関係者の脳裏にワンピースの鮮明な赤い色があまりにも強い印象を残したからである。
少年の手足はきつく縛られていた。額には針で刺したような小さな穴があり、その周辺にはかすり傷がついていた。
さらに不可解なことがあった。死体の足に天秤計りに使うおもりがぶら下がっていたのだ。

そのおもりには数字の「1」が書かれていたという。
すぐに警察が呼ばれた。
警察の係員は死体を調べるためにその場で赤いワンピースを脱がせた。それを見ていた人々は再び驚愕した。
少年はワンピースの下に女性用の水着を着用していたのだ。しかも胸の部分には丸めた黒い布がふたつ差し込まれていたのだ。
太もも、脇腹、両手、くるぶしには何かで縛られた跡が鮮明に残っていた。しかし死因につながるような目立った外傷は発見されなかった。
手足の縛り方は素人離れしていた。ロープの扱いに慣れた者が縛ったとしか考えられなかった。
警察の結論
少年の死体は警察で解剖された。現場での観察と同様に致死的な外傷は発見されなかった。医学的な検査の結果、死因は窒息であると断定された。
警察の現場検証によると死体発見現場には争った形跡はなかった。また部外者が侵入した形跡も発見されなかった。
これらの事情を総合して、警察はこの事件を意外死亡(事故死)と結論付けた。
警察によれば少年には女装癖があり、着用していた女性用の水着からは蝋燭を垂らした形跡も発見されたという。
つまり少年には被虐性の性癖があったというのだ。
警察発表の「意外死亡」は、SM遊びがエスカレートした結果の事故死あるいは自殺を意味するのだ。
警察は事件性はないとしてこの件に関する捜査を打ち切った。
Posted by 編集長
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