錦州の誘拐殺人事件
2004年6月16日の朝6時半ころ、遼寧省北鎮市の中学生D(15歳)は、いつものように朝食を食べた後、自転車に乗って学校に向かった。
自宅は北寧(ほくねい2006年に北鎮と改名)で、学校は閭陽(りょよう)にある。

距離はおよそ20kmもあるので、かなり早い時間に家を出なければ間に合わないのだ。
家を出てすぐにDは見知らぬ男から呼び止められた。
男は「カネを落としてしまったのだが、見かけなかったか?」と訊ねた。
Dが何も答えないうちに男はDに襲い掛かり、首を絞めながらDを林の中に連れ込んだ。
そこには男の愛人Wが待っていた。
男はWと一緒にDの体を縛り、布袋の中に押し込んだ。
そして羊圈子鎮の自分たちの部屋に運び、地下倉庫に監禁したのである。
脅迫
男はDを誘拐してから3日後に、街に出てDが乗っていた自転車を売り払った。
そしてDの家に電話をかけ、身代金3万元を要求したのである。
Dの両親は身代金の支払いを承諾した。後の展開から推測すると、公安にも通報しなかったようである。
3万元は日本円でおよそ50万円である。この金額が安いか高いかは人による。
例えばIT企業に勤めている技術者にとっては大した額ではない。しかし農村の貧しい家庭にとっては大きな金額だ。
Dの両親はカネを集めるのに数日の猶予が欲しいと言ったそうだ。
しかしカネを用意することはできなかったようだ。
数日後、男はDを強姦した。
この間、身代金の要求を行ったかどうかは明らかにされていないが、恐らく何度も要求したのだろう。
さらに数日経ってもカネは集まらなかった。
凶行
誘拐から10日後のことである。
Dを監禁していた部屋に、部屋のオーナーが現れた。
そのときオーナーは、部屋を明け渡すよう要求したという。
部屋を明け渡すとなると、Dを誰にも気づかれないように連れ出さなければならない。
しかしそれは困難であった。
そこでふたりはDを殺害することにした。
ふたりはDを木の柱に縛り付け、床には大きなプラスチック製のタライを置いた。
そうしておいて男はDの首を刃物で切り裂いて頸動脈を露出させた。
露出した頸動脈を切断すると血が噴き出した。
タライを使って噴き出した血液を受け、溜まった血液は屋外に捨てた。
この手慣れた感じが不気味である。もしかするとこの男には職業的な動物解体の経験があったのかもしれない。
血を抜いてから、ふたりはDの遺体を斧で切り分けた。
そのとき男は「人の肉は美味いらしいぞ。どんな味なんだろうな(都说人肉好吃, 但到底啥味也不知道)」と言ったそうだ。
そして切り分けたDの肉の一部を焼き、一部を水煮にしたのである。
ふたりは調理した内臓と筋肉の一部を食べ、食べ残した部分と骨は便所とゴミ捨て場に分けて捨てたという。
これでは遺骨の回収すら困難である。
この犯人が「吐き気がする」と指弾されたのも当然だろう。
犯人たちの余罪
D殺害の翌月である7月の10日のことである。
錦州の凌海市石山鎮に住む15歳の少女Yが帰宅した直後、後をつけてきた30歳前後の男が急に襲い掛かって来た。
Yが大声をあげて抵抗したところ、その男は逃げ去った。
この事件の3日後の7月13日、謝屯郷に住む15歳の女子中学生が強姦された。
このふたつの事件は凌海市(りょうかいし)公安局に通報された。
公安は被害者の証言や犯行の手口などから、ふたつの事件は同一の犯人による犯行であると断定した。
そして公安は石山鎮に住む32歳の男Nに重大な嫌疑があることを突き止めた。
なぜ公安がNに目を付けたのか、捜査の詳細は明らかにされていない。
7月21日、警察官と目が合った途端に向きを変えてトウモロコシ畑の中に逃げ込んだ男がいた。
不審に思った警察官はその男を取り押さえた。その男こそがNだったのである。
身柄を押さえられたNの自供により、7月に発生した強姦および強姦未遂事件の犯人がNであることが明らかになった。
さらに尋問すると、Dを誘拐し強姦し殺害した事実をも自供したのだ。
Nは33歳、Wは21歳。
ふたりは羊圈子鎮の詹屯村(せんとんそん)に一軒家を借りて同棲していた。
記事には「非法同居関系」と書いてあるから、結婚はしていなかったのだろう。
WがNの犯罪を積極的に幇助したのは不思議な気がするが、10歳以上の年齢差を考えれば、支配・被支配の関係が成立していたと見るべきであろう。
N逮捕から2日後の7月23日早朝にはWも逮捕されている。
二人には死刑判決が下され、すでに死刑は執行されている。
この二人の死刑は中国では珍しい薬物注射による死刑執行だった。
このことに対しては、一部の中国人は「甘すぎる」と憤慨している。銃殺で十分だという意味だ。
死刑反対論の人たちならどのように論評するのであろうか?
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Posted by Liu XiangHai
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