あまりにも珍妙な人体発火現象

人体発火現象

人体が自然発火する現象はヨーロッパやアメリカで古くから報告されている怪奇現象のひとつだ。

英語圏にはSHC(Spontaneous human combustion)という呼び方があるくらいよく知られている。SHCという略称は18世紀の半ばにはすでに使われていたというから、人体の自然発火はかなり以前から目撃されていたのだ。

欧米での報告によれば多くの場合に手足が燃え落ちるほどの強烈な炎に包まれるそうだ。不思議なことにそれほど強力な炎が発生しているにも関わらず、周囲の家具などへの被害は少ないという。

言うまでもないがSHCは全く火種が無い状況下で人体が燃える現象を意味する。なぜそのようなことが起こるのか?

人体発火の原因

この奇怪な現象がなぜ起きるのかについては様々な説が存在する。

例えばアルコールの過剰摂取が原因であるとする説がある。

この説が提唱されるのにはそれなりの背景がある。あるSHCの研究者はSHCの被害者の多くが酒好きであったと報告しているのだ。

ウォッカ、ウイスキー、ブランデーのようにアルコール度数が高い蒸留酒は引火する。

このような酒を過剰に摂取した場合には、呼吸によって吐き出されたアルコールが静電気の火花などで発火する可能性があり、それこそが人体発火現象の正体だというのだ。

ただし全ての被害者が酒好きというわけではない。アルコールを摂取していない状況下でも人体発火現象が起きるのはなぜだろうか?

これに対しては腸内ガス引火説が提唱されている。

実は腸内発酵で発生したガスは燃えるのである。少量なら体が燃えるようなことは起こらないが、何らかの原因で腹部にガスが充満したとすればどうだろうか?

体内でガス爆発が発生し、腹部は崩壊する。人体発火現象による死亡者は腹部の損傷が激しく、多くの場合に手足は燃え残ると言われている。

腸内ガス引火説にも一定の説得力があると言われるのはこのような事情があるからだ。

しかしガス爆発は一瞬で終わる。腸内ガス引火説では炎が一定時間持続して体幹部が焼け焦げることを十分に説明できない。

そこで別の説が提唱されている。それは脂肪燃焼説だ。

この説にも背景がある。人体発火現象は太った女性に発生しやすいという研究報告があるのだ。つまり脂肪が多い人のリスクが高いことになる。

もちろん生きている人間の脂肪がいきなり発火することはあり得ない。しかしアルコールや腸内ガスの炎がきっかけとなって脂肪に火が付く可能性があると言うのだ。

この他にも様々な説が提唱されているが、どれも決め手にはなっていない。いずれの説も理論的には可能性はゼロではないが、実際にはムリだろうと考えられているからだ。

例えば最初にガスに火がついてその火が脂肪を燃やすことは理論上は不可能ではない。しかし実際に生きた人間の体でそのようなことが起こると信じる人は少ないのだ。

都市伝説か?

人体自然発火現象は欧米で報告されてきた怪現象である。あらゆる怪奇現象が発生すると言われる中国では一度も報告されていなかったのだ。

中国にも酒好きはいるし肥満体型の人も珍しくない。それなのになぜ中国では人体発火現象は起きないのか?

欧米人が18世紀から語り始めた人体発火現象は実はフェイク情報なのではないか?

あるいは意図的なフェイク情報ではないとしても、いわゆる都市伝説の類なのではないか?

2008年までの中国では人体発火現象に対して疑いの目を向ける人が多かった。全ては海外発の情報であり、リアリティーが不足していたのである。ところが事態は一変することになる。

中国初の人体発火現象

2008年、ついに中国初の人体自然発火現象が報告された。

しかしこれが何とも珍妙な人体自然発火現象だったのだ。事件の顛末は以下のとおりである。

河南省のとある高校に通う男女2人。18歳のこの2人は恋人どうしであった。

授業が終わると2人は一緒に自宅に戻った。どちらの自宅に戻ったのかは資料がないので不明である。事件の流れから判断すると恐らく男子の家に戻ったものと思われる。

家に戻った男子は強い酒を飲み、いつものようにセックスを始めた。

しばらくすると女子は下腹部が耐えられないほど熱くなるのを感じた。そのようなことは初めてだったという。男子も不思議そうな表情をしていた。

体を離してペニスを見ると、驚くべきことに全体が熱で赤くなっていた。熱は強くなり最終的には近寄ることすらできないほどだったという。

しばらくすると熱が収まりペニスは黒くなった。

2人はすぐに救急車を呼び病院に急行した。

診察の結果、女性は下腹部をやけどしていた。男性のほうは完全に使い物にならなくなっていた。焼け焦げた炭に変わっていたという。

医師はこれを人体自然発火現象であると認めた。

発火の原因は不明だが性交の前に酒を飲んだことが関係しているかもしれないと述べたそうだ。しかしこれではペニスだけが燃えたことの説明になっていない。

やはり人体発火現象は謎のベールに包まれた怪現象なのである。