中国駄菓子界の覇王「辣条」の世界

辣条とは

辣条[là tiāo]は中国の代表的な駄菓子(零食)の一種だ。

小麦粉の生地にトウガラシを中心とした調味料で味を付けて作られる。

中国では次の理由からジャンクフードの代名詞とも言うべき存在としても知られている。

大量の食品添加物がぶち込まれている(添加剤超標)
生産の統一的な基準が存在しない
設備が不十分な零細企業が作っている(小作坊)
不良企業が参入しやすい(黒心工廠)

しかしながら非常に人気のある駄菓子であるから、市場から淘汰される気配は全くない。

もし辣条を食べたいのなら、自作するべきだと言う人もいるが、ジャンクフードを好む人は健康のことなど眼中にないようだ。

中国のネット上には「辣条を食べて子供が死んだ」という情報が少なくないが、どこまでが本当なのか確認のしようがない。

こうした情報の中には子供を脅かして食べさせないようにするためのフェイクもかなり含まれているようだ。

辣条のルーツ

湖南省に平江県(へいこうけん)という醤干豆腐の名産地がある。

醤干豆腐は豆腐を薄い板状に整形して水分を絞り、トウガラシや醤油などで味をつけた食品である。

醤干豆腐

なお湖南省はトウガラシの本場であるから、味付けにトウガラシが使われるのは必然である。

1998年に湖南省で大洪水が発生し、農作物に大きな被害が生じた。この影響で大豆の値段は倍以上に跳ね上がったそうだ。

原料のコストが倍以上になったため、平江県の醤干豆腐メーカーは存続が危ぶまれるほどの危機に晒されたそうだ。

このとき大豆よりも価格が安い小麦粉を使って醤干豆腐に似た製品が開発された。それが辣条の原型なのである。

当初は醤油とトウガラシの「大人向け」の味付けであったが、甘みを加えることにより子供たちからも好まれるようになり、全国的なヒット商品に成長したのである。

しかしもともと平江県は小麦の産地ではなかったので、現在の中国では平江県を中心とする生産地の他に、小麦の生産地である河南省にも生産拠点が存在する。

平江県周辺で生産される辣条を南派、河南省で生産される辣条を北派と呼ぶこともある。

ただし南派と北派に際立った味の違いはない。製品の違いはメーカーによる違いであると言ってよいだろう。

余談だが2000年の調査によると、河南省だけで4000ものメーカーがあったそうだ。

ほとんどが零細企業であり、杜撰な衛生管理が問題となった。現在では多少なりとも改善されていると信じたい。

以下、市販されている製品を紹介しよう。

辣条界の巨龍:衛龍

衛龍は河南省・漯河市(らくがし)の辣条メーカーだ。中国では「辣条界の巨龍」とまで呼ばれる北派を代表する企業である。

衛龍は大規模な工場で複数の商品を大量生産している。

辣条は非衛生的な環境で生産されているというイメージが強いため、衛龍は積極的に近代的な工場の内部を公開して衛生的なイメージをアピールしているようだ。

画像を見る限り、機械化された衛生的な環境で生産されているのは間違いない。

現在では衛龍の製品はアメリカでも販売されている。アメリカでは中国人の常識からは考えられないほど高い値段で売られているため、大きな話題になったこともある。

宇仔大刀肉

大刀肉は辣条の一種である。肉という字が使われているが、もちろん小麦粉から作られている。

大刀肉

大刀肉の代表的な商品である宇仔大刀肉安徽省のメーカーの製品である。

だから南派とも北派とも言えない。

良く言う人は南派と北派の優れた点を融合した製品であると称賛している。

このメーカーの製品は80後(1980年代に生まれた世代)に人気があるとされている。

約辣

約辣三只松鼠(三匹のリス)というIT企業(ネットで食品を販売する業態)が発売している辣条だ。

辣椒王、山鷹椒という2種類のトウガラシを使った変態辣(激辛)商品である。

コンドームを連想させる「性感」パッケージが、可愛らしいリスのロゴとミスマッチであり、子供向けの駄菓子を大人用にリニューアルする意図がうかがえる。

編集部から

この記事では中国全土の辣条を順次紹介する予定です。

以後加筆しますので、ご興味のあるかたはブックマークを!