北部戦区司令員・李橋銘から王強へ

突然の人事

2022年9月、軍幹部の王強が習近平により北部戦区司令員(中国語では指令員ではなく司令員)に抜擢された。

この人事は非常に異例であるため多くの憶測をよんでいる。

王強の前任者である李橋銘は1961年生まれである。

河南省出身で陸軍幹部から北部戦区司令員に出世した人物である。

北部戦区司令員に就任したのは2017年。2022年の時点で61歳であるから、軍幹部の通常の定年である65歳までまだ数年ある。

したがって2022年9月の時点で急に王強と交代になるのは異例なこととして注目されているのだ。

王強

王強は1963年生まれ。四川省出身である。

北部戦区司令員の前任者である李橋銘よりも2歳年下ということになる。

王強は空軍出身者であり、習近平の「引き」により出世した軍人である。略歴は以下の通り。

2016/1 習近平により西部戦区副参謀長(兼空軍参謀長)に抜擢
2018/7 習近平により西部戦区副司令員に抜擢
2020/4 習近平により西部戦区空軍司令員に抜擢
2020/6 習近平により空軍中将軍に抜擢
2022/9 習近平により空軍将軍・北部戦区司令員(李橋銘の後任)に抜擢

クーデタ未遂?

北部戦区司令員が突然李橋銘から王強に交代になった理由については、李橋銘がクーデタを計画(あるいは未遂)したためという憶測が流れている。

その一方でクーデタ情報については懐疑的な意見も多い。

李橋銘の過去の言動からは反習近平あるいは反共産党的な要素は見いだせない。

現在、李橋銘は行方不明とのことであるが必ずしも排除されたとはいえない状態である。

李橋銘に関する記事を見ると従来のまま(2022/9/13現在)であるが、現政権の敵とみなされて排除されたのであれば、それなりの評価が表明されるはずである。

また軍事の専門家である李橋銘がすぐに鎮圧されるようなクーデタを断行する可能性は低いという評価もある。

李橋銘は軍の将校だけあって戦争・戦略に関する論文も多い。

このような人物が己の命を賭けてクーデタを断行したとすれば、あまりにもショボすぎるというワケである。

以上よりクーデタ未遂という情報については懐疑的な意見も多いのである。

もうひとつの可能性

李橋銘に関しては中央軍事委員会の連合参謀長に昇進するのではないかという情報が以前から出ていた。

候補者として名前が挙がっていた人物の名前と情報は以下の通り。

李橋銘:1961年4月生まれ、北部戦区司令員、上将昇進は2019年12月
徐起零:1962年7月生まれ、連合参謀部副参謀長、上将昇進は2021年7月
劉振立:1964年8月生まれ、陸軍司令員、上将昇進は2021年7月
林向陽:1964年10月生まれ、東部戦区司令員、上将昇進は2021年9月

このうち李橋銘が最高齢であり上将昇進からの期間も長いので抜擢の可能性はゼロではない。

李橋銘再登場

2022年9月21日に開催された中共の「国防和軍隊改革検討会」に李橋銘が出席した。

本来であれば会議に出席するはずの習近平が出席していないことから政変の噂も流れているが、少なくとも李橋銘がクーデタ未遂で殺害されたとの情報は誤りであることが明らかになった。

追記

2023年1月、李橋銘が人民解放軍陸軍司令員に就任した。

2022年に李橋銘がクーデタを計画したとの情報が流れた時点で、中国ウォッチャーとされる人たちの見解は二分していた。

ただし普段から私が参考にしている情報ソースは全てクーデター説を否定していたので、このサイトでも李橋銘が順調に昇進する可能性すらあるとお伝えした。

結果的には以前から正しい情報を発信している情報ソースの正確性が確認されたので、今後もこのサイトでは実績のある(信頼性の高い)情報をベースに中国情報をお届けしてゆきます。