黒暗料理とは何か

黒暗料理

中国には黒暗料理という言葉がある。

これは簡単に言えばネットを「ざわつかせる」料理である。必ずしもマズイ料理とは限らないが、一見しただけで驚愕し、絶句し、食欲を失うようなものが多い。

本来なら気味の悪い料理として見向きもされないはずの料理であるが、ネットにアップすることによって全国的な注目を浴びる可能性が認識された。

次々に登場する黒暗料理は、ネットに画像をアップできるようになった現代の珍現象のひとつと言えよう。

ラーメンアイス

熱いのが当然の食べ物を凍らせたらどうなるか?

この発想で作られたのがラーメンアイスである。これが最初にネットをざわつかせた黒暗料理だと言われている。

インスタントラーメンを作り、それを棒状アイスの形に凍らせて作る。

シンプルであり、意外性もある。この画像は瞬時に拡散した。今でも知名度は抜群であり、黒暗料理の代表格といってよい。

味の評価はさんざんだ。

二度と食べたくない
気持ち悪い
見た目が悪すぎる

中国人はインスタントラーメンが大好きだ。その中国人が冷凍したラーメンは食べられたものではないと酷評している。

同じ食品でも温度は大切だ。凍らせることにより極度に不味くなるものもある。

学生食堂

中国民航大学の学生食堂は中国では非常に有名である。

大学が有名なのではなく食堂が有名なのだ。なぜか?

この食堂で出された「こしあん月餅のトマト炒め」のせいである。

本来月餅は炒め物の具ではない。にもかかわらず、月餅を四つ切りにし、トマトと一緒に炒めた。そしてパクチーの緑を添える。

10億人以上の人口がいれば、月餅をトマトと一緒に炒めるというアイディアを思いつく人がいても不思議ではない。

しかし実際に作る行動力は凄い。しかも自宅で冗談半分に作るのではない。仕事で大勢の学生に出す料理として作ってしまう。

この自由な感覚、軽やかな飛翔。中国の学生食堂には無限のポテンシャルがある。

板藍根ラーメン

板藍根という漢方薬がある。

板藍根は単なる漢方薬ではない。中国人の常備薬であり、最もポピュラーな薬なのだ。

2012年の年末だから、もうかなり古い話になるが、漆黒のスープに浮かぶラーメンが中国のネット民の魂を揺さぶった。

この黒はいったい何だ?

イカ墨か、墨汁か?

実は、板藍根を煎じた色がこれ。

インスタントラーメンを作るにはまずお湯を沸かす。その湯の代わりに板藍根を煎じて黒い煎じ薬を作る。

その液体でインスタントラーメンを作ると、板藍根ラーメンが完成するのだ。

この色は中国人のド肝を抜き、板藍根ラーメンの画像は瞬時に中国全土に拡散した。

一夜にして有名になった板藍根ラーメンの発明者にあやかろうと、奇抜なラーメンが次々に登場した。

炭酸飲料
コーヒー
バナナミルク

これらはただただ気味が悪いだけ。単なる二番煎じ。板藍根ラーメンほどのインパクトはなかった。模倣はオリジナルを超えることはできないのだ。

老干媽アイス

中国で老干媽と言えば、ラー油の代名詞である。

スーパーやコンビニに行けば必ず売っている。それどころか、爆買いで日本に来る中国人は、わざわざ中華食材店で老干媽を購入し、和食を祖国のに変えて食べると言われている。

海外の日本人が醤油や納豆を欲しくなるのと同じ心理なのだろう。

老干媽

この老干媽だが、中国でアイスにつけて食べるという凶行が流行した。

「老干媽アイス」で検索すると、ついに食べた!食べ始めたら止まらない!などの記事が大量にヒットする。

アイスにラー油をつけると油はアイスの表面で膜状に固まり食べやすい。

食べると辣さはほとんど感じず、アイスの甘さとラー油の味が融合して、独特の味覚を作り出すのである。

しかしさすがの中国人もこうした食べ方は何か不吉と感じるようだ。

そもそも中国には冷たいものを食べてはならないという養生訓がある。また味の濃いもの、油の強いものは体に悪いとの考えがある。

辣油アイスには、冷たい、味が濃い、油っぽいの三拍子がそろっているため、科学的検証などをスキップして、体に悪いから止めろと言われている。

体に悪くてもおいしければ食べるのが子供の特徴だ。子供には理を説いても始まらない。

老干媽アイス中毒から子供たちを救う手立てはないのである。

付記

中国では毎年のように新たな黒暗料理が現れている。

その多くは見た目が奇抜なものが多い。

しかしそれだけではなく、いかにもマズそうなものも少なくない。

黒暗料理も「料理」というからには、食べられるレベルのものでなければ面白さも半減するように思われる。