八仙飯店の一家皆殺し事件に付きまとう人肉料理疑惑

凶行

私に子供を渡して!

静寂の中、Zの妻Cの大きな声がHの凶暴性に火をつけた。

HはCの首に割れたビール瓶を突き刺した。そして次々とその場にいた人たちを殺害したのである。

Hは最後に7歳の子供を殺そうとした。

そのときその男子は「オバサンが警察に言いつけたら、おまえなんかすぐに捕まるよ」と言ったそうだ。

男子を殺害したHは、その「オバサン」を八仙飯店に誘い出し、殺害してしまった。

その後Hは8時間かけて遺体を解体したのだ。

Hはその日だけで10名を殺害したことになる。

自殺

1986年12月4日の早朝、収監されていたHは、栓抜きを研いで作った刃物で動脈を切り裂き、自殺を図った。

8時ころ、朝食を運んできた職員が発見したときには、すでに息絶えていたそうだ。

マカオの監獄には「送鬼」と呼ばれる習慣があるそうだ。

牢獄で死亡した者の霊魂は成仏できない。だから死者の霊魂に対して「出獄」の儀式を行うのだ。

職員は黒い傘と線香を持ち、監獄の外にHの霊魂を送り出したという。

事件の謎

この事件には多くの謎が残されている。

実は、回収された遺体の一部が誰のものなのか、明確には解明されてはいないのだ。

回収されたパーツはDNA鑑定が始まる以前の技術では照合ができないほど腐乱していたからだ。

多くの人はどのパーツも八仙飯店の一家のものだと考えている。

しかしそれは状況証拠に基づく推測であり、確証はない。まだ明らかにされていない被害者がいた可能性も否定できないのだ。

また最後に殺された「オバサン」を呼びに行った人物が誰なのかという点も謎のままである。

目撃者の証言によると30歳前後の男であった。

Hの息子は20代前半であるから符合しない。もちろんH本人でもない。

では誰なのか?

やはりこの事件には誰にも知られていない複雑な背景があるようだ。

さらに不気味な謎がある。

被害者の遺体の一部が発見されていないのだ。

飲食店で殺された被害者。その遺体の一部が消えている。

多くの人は八仙飯店で調理され、客に出されたのだと推測している。

マカオを含む中国の南方では、甘く煮た肉を「あん」にした叉焼包が非常にポピュラーな食品である。

八仙飯店で人肉叉焼包が売られていた。

この不気味な推測は、今後も永遠に語り継がれるに違いない。

補足説明

事件の犯人Hには殺人の前歴があった。

1973年11月15日、Hはホンコンの知人に商売の資金1万元の借金を申し込んだ。

この申し出を断られたHは激高し、相手を浴槽の水に沈めて溺死させたのだ。その後、家屋に放火している。

家族は逃げ出して命に別状はなかったが、姉は刃物で傷を負わされた。

その時点でHは別の名を名乗っていたが、逃亡中にHという名を名乗るようになっていたのだ。名前を変えて逃げ延びるつもりだったのだろう。

Hはいったん香港から脱出し、広東省の田舎に潜伏した。Hはそこで知り合った女性と結婚している。

結婚後、Hはマカオに移住した。

殺人事件とのかかわりが発覚するのを防ぐため、Hは自分の指を焼いたり切断したりして、指紋を照合できないようにしていた。このこと自体がHの異常性を物語っている。

1986年に八仙飯店の一件で逮捕されたのち、殺人事件の被害者家族がHを犯人だと断定した。

激高すると相手を殺してしまう。それだけではなく、その場にいた人たちをも襲う凶暴性。

大量殺人を行う犯人には、常人とは異なる異常性があるという典型例だ。