緑色の血液をもつ怪物

青蔵鉄道

青蔵鉄道は青海省西寧とチベットのラサを結ぶ全長1956キロメートルの高原鉄道である。

世界最高の高地を走る鉄道であり、厳しい自然環境の中を走破する鉄道としても有名である。

車窓からの眺めはときに美しく、ときに峻険である。この光景も青蔵鉄道に乗車する楽しみのひとつとなっている。

富士山の頂上に匹敵する高地。厳しい自然環境。

これらは今となっては青蔵鉄道の宣伝文句であるが、この鉄道がどのように建設されたかを考えるとき、それは過去に例のない過酷な、そして恐ろしいものであったことを想像させる。

致命的な好奇心

青蔵鉄道の建設現場は遠方からやってきた鉄道建設作業員たちにとっては完全に未知の世界であった。

そこは都市とは隔絶された世界であり、現地の風俗習慣はもちろん、自然環境がどのようなものかも知られていなかった。

そしてどのような生物が生息するかも知られていなかったのだ。

青蔵鉄道は謎に満ちた前人未到の地に建設された空前絶後の路線なのである。

鉄道建設作業員の中に江西省からきたAという男がいた。25歳の血気盛んな若者である。

Aは好奇心旺盛で作業が休みの日には、現地の「探検」をすることが多かった。

探検の対象は廃墟や洞窟など不気味な場所が多かった。どこかしら危険な雰囲気が漂うところがAの冒険心を刺激していたのであろう。

ある休日のことである。

Aは同僚のCとZに赤毛の野獣を探しに行かないかと提案した。Aはその地域に赤毛の野獣が出没するという噂を耳にして好奇心を抱いていたのである。

作業現場には大した娯楽はない。見知らぬ土地の冒険はヒマを持て余していた若者にとって非常に魅力的な話だった。

CとZはAの誘いに乗り赤毛の野獣が出没するとされる山に向かうことになったた。

黒い影

目的地は宿営地からかなり離れたところにあった。日ごろから鉄道の建設作業で鍛えられている若者たちにとって、長距離の歩行は苦痛ではなかった。すでに高地の薄い空気にも慣れていたのだ。

3人は荒涼とした平野を何時間も歩いた。ようやく宿営地付近の住民から聞いた通りのこんもりと緑が茂る小山が見えてきた。

そのとき予想もしなかった事態が発生した。

突然黒い影が現れCに襲い掛かったのだ。

Cに襲い掛かったのは身長が2メートルほどもある怪物だった。

全体の印象は巨大な猿のようであった。全身は黒い毛で覆われていて頭部の毛だけが何かで染めたように赤かったという。顔面も毛に覆われていて顔だけの印象は猫のようにも見えたそうだ。

怪物の鋭い爪がCの背中に突き刺さるとCは大きな悲鳴を上げた。明らかに生命の危険が迫っていた。

Aは野獣の注意をそらすために石を拾って投げつけた。Aを睨みつけた野獣の目は黄緑色であったという。

逃走

Aはもう一度石を投げつけた。すると野獣はAに向かって走り出した。明らかに攻撃目標をAに変更したのだ。

Aは全速力で逃げながらCとZに「早く逃げろ」とどなった。自分がおとりになって2人を助けるつもりだったようだ。2人を誘ったことに責任を感じていたのかもしれない。

野獣がAを追っている隙にCとZは逆の方向に逃げ出した。

巨大な野獣は素手で戦えるような相手ではない。一刻も早く宿営地に戻り武器を持ってAを助けに戻るつもりであった。

宿営地に逃げ帰ったときにはCの様子が一変していた。顔色は青ざめ息は粗くなっていた。目の焦点が合っていない。

怪物に襲われたときの傷が予想以上に大きなダメージを与えていたのだ。傷口からは異臭が漂っていた。Cはすぐに病院に搬送された。

Zは鉄道警察に駆け込んで事情を説明した。とにかくAを救わなければならないのだ。

山狩り

過酷な土地で寝食を共にする人たちの結束は固い。病院に搬送されたCの様子を見ていた鉄道警察の幹部はZの訴えを聞くと直ちに山狩りの部隊を編成した。

相手は凶暴な野獣だ。隊員たちは各自ライフルを携帯した。

Zは疲労困憊にもかかわらず先頭に立って部隊の案内役を務めた。野人が現れた山に到着すると部隊のメンバーは分散してAを探した。

すると間もなく怪物発見を知らせる笛が鳴り響いた。

集合した隊員たちは緑に覆われた窪地の中で巨大な怪物が蠢いているのを目の当たりにした。怪物は隊員たちには見向きもせず夢中で何かをむさぼっていた。

よく見るとその怪物はAの腹を裂いて内臓を引き出し、食い荒らしていたのだ。

隊長の命令を待たずに誰かが発砲した。すると隊員たちは堰を切ったように怪物めがけて銃弾を撃ち込み始めた。

野獣は文字通り蜂の巣にされた。その血液は緑色であったそうだ。

野獣が銃弾を浴びせられていたころ、病院に搬送されたCは死亡していた。

Cの傷口は急速に腐乱し病院に搬送された時点ではすでに意識がなかったという。

恐らく野獣の爪には特殊な細菌か寄生していたか、あるいは強力な毒があったのだろう。そうでなければ傷口が急速に腐乱した理由が説明できないのである。

青蔵鉄道建設の影には、このような奇怪な物語が隠されているのである。

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Posted by 編集長 妙佛大爺

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