奇怪な発光体
北朝鮮に近い中国東北部に鳳凰山(ほうおうさん)という山がある。
鳳凰山の周囲は国家級の自然保護区に指定されている。年間の平均気温は3度に満たない寒い土地だ。
しかし自然は豊かである。樹木が生い茂り、さまざまなキノコが採取できる。原生林の周囲では栗の栽培が盛んだ。
また鳳凰山の周囲には薬用になる数種類のカエルが生息することでも知られる。それらは林蛙と総称され、いわゆる「ガマの油」の原料となる。林蛙は非常に貴重な生物資源である。明代、清代には皇室への献上品にもなっていた。
こうした資源があるため、過酷な自然環境にもかかわらず、昔から人の出入りが盛んであった。
1994年、鳳凰山の付近で奇怪な発光体の目撃情報が相次いでいた。
そして中国三大UFO事件のひとつである孟照国事件(もうしょうこくじけん)が発生するのだ。この事件は発生現場の名から鳳凰山事件(ほうおうさんじけん)と呼ばれることもある。
孟照国
1994年当時、鳳凰山の付近に紅旗農場という作業場があった。
紅旗農場に孟照国(もうしょうこく)という名の作業員がいた。当時27歳の男性である。
孟照国は農家の出身で小学5年までの学歴しかなかった。まだ経済発展以前の中国ではこのような学歴の人がたくさんいたのだ。
最初のコンタクト
1994年6月のことである。孟照国は鳳凰山の方角に銀色に光る物体を目撃した。
光の行方を目で追った孟照国は、気球が落下したのだろうと考えたそうだ。中国では現在でも金属片やプラスチックは資源として売却できる。
落下した気球を回収すればある程度の稼ぎになると判断した孟照国は、親戚の男性と一緒に鳳凰山に登った。
気球の墜落現場と睨んだ地点に到着した孟照国は驚愕した。
そこには巨大なオタマジャクシ形のUFOが停止していたからだ。全体は銀色に輝き、彼の目測によると150メートルもの幅があったという。
孟照国はそのUFOに近づこうとした。しかし突然耳を刺すような鋭い音が鳴り響き、携帯していた金属製品から電撃のようなショックを受けた。
驚いた孟照国は親戚の男とともに逃げ帰ったのだ。
最初のコンタクト
孟照国は自分の体験を労働者組織の幹部に上申した。
数日後、労働者組織の幹部は30名以上の調査隊を組織して鳳凰山に登った。もちろん孟照国も案内役として調査隊に加わった。
このときUFOそのものは発見されなかったが、新たな事件が発生した。孟照国が体を痙攣させて気を失ってしまったのだ。
意識を回復した孟照国は、望遠鏡でUFOを探している最中に黒い服を着た何者かがこちらに指先を向け、その指先から光線が発射されて気を失ったと証言した。
その証言を裏付けるかのように、孟照国の眉間にはレーザーで焼かれたような火傷ができていた。
宇宙人の訪問
さらに数日後、孟照国は世にも不思議な体験をすることになる。
寝室で寝ていた孟照国の目の前に宇宙人が現れたのだ。孟照国の体の上に浮遊していたという。
それは女性の宇宙人だった。
身長は3メートルほどあり、指は6本あったそうだ。その他は人類とほぼ同じ外見であったという。ただし脚は毛に覆われていたそうだ。
驚くべきことに孟照国はその宇宙人と40分ほど性交したというのだ。性交が終わると宇宙人は壁をすり抜けて消え去った。
孟照国の太腿には直径5センチメートルほどの痣ができていたという。
さらにその1月後のことである。
孟照国は宇宙人によってUFOの中に案内された。このとき孟照国は壁をすり抜け、空中を浮遊してUFOまで移動したという。
孟照国は自分と性交した宇宙人と会いたいと言ったが、希望は聞き入れられなかったそうだ。ただし宇宙人は60年以内に孟照国の子が別の星で誕生すると告げたという。
世間の反応
孟照国の体験は大々的に報道された。中国国内のメディアだけではなく、台湾や香港の記者も孟照国とコンタクトを求めた。
さらに大学教授、人民解放軍の幹部、中央政府の政治家までが孟照国と面会しているのだ。
一躍有名になったが孟照国の証言に対しては当初から賛否両論がある。
孟照国の証言が真実なら、UFOも宇宙人も存在することになる。
この話を信じられない人は少なくない。その一方で孟照国の証言を真実だと考える人もいる。
孟照国には嘘をいう動機がないからだ。また実際に気を失ったり火傷を負ったりしている。
1994年以来、孟照国事件は延々と議論され続けている。
現在でも中国のネット上には孟照国の証言を糾弾するブログや記事が散見される。そうしたウェブサイトには人類の言葉が宇宙人に通じるはずはないとか、人類と宇宙人は種が違うから交配できるはずがないなど、もっともな意見がつづられている。
その一方で孟照国の証言にはいくつもの裏付けがあるのだから、UFOの存在も宇宙人の存在も疑うことはできないとする肯定的な意見もある。
ポリグラフ
孟照国の不思議な事件はいつまでも風化せずに世間の注目を浴びつづけていた。
この流れの中で2003年9月に孟照国はポリグラフ(うそ発見器)にかけられたまま宇宙人についての質問を受けることになったのだ。
その結果、孟照国がうそを言っている徴候は現れなかった。
このことによってUFO肯定派の主張が信憑性を帯びてきた。
やはりUFOも宇宙人も存在するのだ。それだけではなく人類の子孫が地球外に誕生することも確実になったのだ。
長年にわたってUFO論争の中心に位置し続けてきた孟照国事件は、現在でも多くの中国人が記憶にとどめるUFO事件のひとつなのである。