薬物的な効果をもつ食材
市販されている食品の中には大量に摂取すると違法薬物を摂取したときと同じ精神状態になるものがあると言われている。
トウガラシもそのひとつである。
ただしトウガラシだけを大量に摂取しても通常はトリップしない。激辛料理を大量に食べても精神状態は何も変わらないことが多いのだ。
しかしトウガラシに別の成分がミックスされると特別な効果が生まれると言われている。別の成分自体は少量でも大きな影響があるらしい。
この組み合わせが意図せずに作られてしまうことがある。そのひとつが中国の大衆的な食品である辣条[la tiao]だと言われているのだ。
辣条
辣条は小麦粉の生地にトウガラシなどの調味料を加え、板状に成型してから加熱して作られる食品である。
辣条は中国では非常にありふれた駄菓子だ。子供にとっては「おやつ」であり、酒飲みにとっては「つまみ」でもある。
この辣条を30分以内に10袋食べると「精神恍惚」状態になるという噂がある。どこにでも売っている安い「つまみ」でトリップできるというのだ。
中国では多数のメーカーが辣条を販売している。その全てにトリップ効果があるわけではない。
トウガラシの他に使われている香辛料か添加物が重要な役割を果たしていると推測される。
しかしそれが具体的には何なのか、どのメーカーの製品にトリップ効果があるのかについては、情報が錯綜していてわかりづらい。
危険な検証実験
この噂を検証すべく、ある男性が実際に辣条を大量に食する実験に挑んだ。
彼はネットで検証を予告し、自宅の一階の店で10袋の辣条(商品名は棒棒鶏)を購入し、さらに商品名泡椒臭干子を2袋購入した。
棒棒鶏の原料は鶏肉ではない。
何かの野菜の根のようにも見えるが、原料は小麦粉である。泡椒臭干子も形状は異なるが、原料はやはり小麦粉である。
全て合わせると重量は1キログラム以上になる。
彼はこれらを30分以内に完食した。
完食直後の精神状態は全く普通であった。彼が食べた辣条にはトリップ効果はなかったのである。
思わぬ副作用
しばらくすると下痢が始まった。さらに胃のむかつきと吐き気に襲われ、食欲は完全になくなった。
病院に行くと急性胃腸炎と診断された。しかも極度に脱水していたため、点滴を受けることになった。
彼がアップした写真には病院で処方された薬が写っていた。その中には細菌を死滅させるための抗生物質も含まれていた。
つまり彼の急性胃腸炎はトウガラシの辛さのせいだけではなく、細菌汚染が原因だったのだ。
辣条の中には非常に非衛生的な環境で作られているものもある。病原菌が混入するようなケースもあるということなのだ。
このようなものが市販されていても問題にならないのは、食べるのが1袋だけなら胃酸その他の防御システムで細菌が死滅するからだろう。
ただしトリップするくらい大量に食べるとなると話は変わって来る。
辣条によるトリップは一歩間違えば冥界への跳躍になりかねない危険な行為なのである。