棺材菌とは何か
中国の農村では、土葬された遺体から、棺材菌という名のキノコが生えてくると信じられている。
棺材菌は遺体の口の中から伸びてきて棺桶の木材に菌糸を伸ばす。
人の口(頭部)から出てくるため、棺材菌には対口菌または人頭菌という別名もあるのだ。
かつての中国には起骨という習慣があった。
いったん埋葬した遺体の骨を掘り出して、改めて骨だけを埋葬するのが起骨である。
このときに棺材菌が見つかることがあったそうだ。
棺材菌は霊芝の一種であると考えられていて、地霊芝、血霊芝などと呼ばれることもあるようだ。
棺材菌発生の条件
棺材菌は南方の温かくて湿度が高い地域に生えやすい。北方に生える例は少ないという。
また棺桶の材質としては、針葉樹よりも広葉樹で作られている棺桶に埋葬した遺体に棺材菌が生えやすいと言われている。
棺材菌ができるには非常に長い時間がかかる。
遺体を埋葬した後に、棺桶が湿気を吸って腐ると棺材菌が成長を始める。
しかし5年ほど経ってもキノコの傘は形成されないそうだ。
最初に灰色または黒い肉のような弾性のある菌体が成長する。
その後、キノコの傘の部分が形成されるが、その形は棺桶の中の環境によって一定しないそうだ。
色は灰色、黒の他に、赤い場合もある。
20年以上経過するとキノコ全体が木のように固くなる。
棺材菌についての伝説
棺材菌は非常に珍しいキノコである。
中国の農村では次のような条件を満たした墓に生えやすいと言われている。
棺桶の材質は一級品でなければならない
男性の遺体に限られる
美食家の遺体に生えやすい
73歳または84歳で死亡した人の遺体に生えやすい
また中毒死した人の体に生えやすいとか、生き埋めにされた人の体に生えやすいという伝説もある。
生き埋めにされた人が棺桶の中で血を吹き、その血に染まった部分に棺材菌が生えるという言い伝えもある。
幻の漢方薬
棺材菌には薬効があるとされている。
棺材菌は珍しいキノコなので、非常に高価な薬として取引されているのだ。
薬としては地霊芝、血霊芝、冥芝、屍蕈、龍棺菌などとも呼ばれるようだ。
中国の正式な薬典には記載はないが、民間では万病を治す霊薬と言われている。
特に骨の癌の治療に効果があるとされている。
味はプーアール茶に似ているそうだ。
以上の話は中国で語られている棺材菌に関する話の一例である。
棺材菌は必ずしも棺桶の中に生えるとは限らず、墓の上にまで菌体が伸びてくるという話もあるのだ。
そのため墓地で見慣れないキノコが発見されると、棺材菌だと誤解されるケースも少なくないようだ。
毒キノコを棺材菌だと勘違いして販売し、それを買った人が中毒死する例も報道されている。
棺材菌は幻のキノコだけに、どのような姿をしているかについて、明確な情報がない。
口にするのは命をベットする賭けに等しい行為なのだ。