伝説の宝石「夜明珠」の謎

もうひとつの夜明珠

中国では貴人が死亡すると口の中に宝石を含ませて埋葬する習慣があった。この宝石を含玉、含珠、含貝などと呼ぶ。

球形のものもあるが、古くは蝉の形に彫刻された玉が用いられることが多く、それゆえに玉蝉と呼ばれることもある。

玉蝉

図鑑や博物館などで中国の古い宝石を見るとセミの形をした玉を見かけることがあるが、多くの場合、それは死者の口の中から奪われたものなのである。

西太后が埋葬されたとき、その口には重量134グラム弱の夜明珠が含まれていたという。

本来なら西太后の遺体とともに永遠の眠りにつくはずであった。

しかし西太后の陵墓は間もなく軍閥・孫殿英(そんでんえい:1889年から1947年)の盗掘に遭い、口の中の夜明珠も奪われてしまったのである。

孫殿英

孫殿英は国内外からの批判をかわすために多くの有力者に盗んだ財宝を分け与えたと言われている。

この過程で夜明珠は蒋介石の妻である宋美齢に渡ったとされているのだ。

しかしこの話には確証はない。西太后の陵墓から奪われた夜明珠の行方はいまだに謎なのである。

夜明珠の驚くべき価値

夜明珠は非常に珍しい宝石であり宝中之王とさえ言われている。王侯貴族ですら滅多に入手ができない希少な宝石であった。

その価値は手のひらに乗るくらいの大きさのもので、日本円で10億円は下らないとされている。

それもそのはずで、夜明珠はダイヤモンドなどと違って、ここを掘れば見つかるというような宝石ではないのだ。

夜明珠は必ずしも一種類の物質ではないようだが、ある説明によると隕石の一種なのだそうだ。

従って夜明珠の発見は全くの偶然であり、しかも発見の確率は非常に低いのである。

手のひらに乗るくらいの大きさで10億円は下らないという話も確実ではない。中国ではしばしば「値段がつけられない宝」と言われている。

つまり所有者の言い値なのだ。10億円も出せば売ってくれるだろうという程度の意味であって、仮に所有者が100億でなければ売らないと言えば、他から入手できない以上、100億出すしかないのである。

民間の所有者

このような貴重な夜明珠を所有している人物がいる。

それは雲南省の東部、曲靖に住むPという人物だ。この人物は先祖代々伝わる夜明珠を所有していたが、社会が不安定である時期には人に見せるのは危険と感じて隠し続けていた。

すでに北京と上海の宝石鑑定家の鑑定を受け、1億年以上前の隕石であると太鼓判を押されたという。その価値は1億元(日本円でおよそ16億円)以上とのことである。

すでにイギリスから取引の打診が来ているそうだ。

隕石の発見は全くの偶然である。もしかしたら明日の晩にもあなたの目の前に落ちてくるかもしれない。