続発する北京地下鉄の怪異

北京の地下鉄

北京の地下鉄には妙なうわさ話が多い。

そもそも北京は国の首都になる以前から、鬼神妖怪のたぐいが多い土地であったようだ。

霊的な存在は人間が土地を荒らすことを嫌う。だから工事を行うには霊的存在の許しを請うための儀式を行うのが常識である。

とりわけ地下鉄工事のように地下の構造に大きな変化を与える場合には、土地の神を鎮めるための手順が必要だ。これを怠ると工事に支障が起きるだけではなく、祟りによる被害すら覚悟しなければならないという。

霊との約束

北京で地下道工事が始まったとき、伝統的な地鎮のための儀式は行われなかった。

共産党の党是は「迷信打破」である。鬼神の存在を認めるような儀式を公式に行うことは国の方針に反するのだ。

霊との約束

工事が始まると予定外の問題が次々に現れた。

開削予定の地下に本来あるはずがない巨石が立ちはだかり工事が難航し、厳重な予防機構を備えているはずの構内で落盤事故が相次いだのだ。

土木工事に携わる職人は、信心深い人が多い。危険と隣り合わせの仕事だけに、神の加護を祈る習慣があるのだ。

工事開始の直後から、現場の職人たちのあいだには、鬼神を恐れる声が上がっていたという。

事故が相次ぐ中で、ついに工事現場から多数の古い人骨が発見された。これをきっかけにして死者の霊が工事を拒んでいるとの噂が広がった。

現場に動揺が広がれば作業員の確保にも問題が生じかねない。

そこで当局は霊を鎮めるために異例の法事を挙行した。その儀式の中で、子の刻(23時)以後は工事をしないとの約束をしたと言われている。

この法事の後、地下鉄工事は順調に進行したというから不思議である。

開業後の約束

地下鉄が開業した直後は法事での約束は守られていた。北京では23時以後は閉門し列車を運行していなかったのだ。

しかしこれは開業時の話である。

時刻表を確認してみればわかる通り、現在の北京では23時過ぎの列車も走っている。

つまり霊との約束は破られているのである。

そのせいかどうかは不明だが、北京の地下鉄にまつわる奇怪な話は枚挙に暇がない。その一例をご紹介しよう。

あるはずのない駅

1996年8月14日の晩のことだ。

ある男性が地下鉄1号線の終電に乗った。車両の内部には彼の他に数人の乗客がいた。

ふと、ひとりの顔を見ると、土のような色であった。身なりが粗末であったため、彼は物乞いであろうと考えた。

中国の地下鉄には今でも物乞いが乗車することがある。

場合によっては拡声器を使って歌をうたい、小額の金銭を受け取る人もいるくらいなのだ。彼は目をつぶって物乞いに気づかないふりをした。

地下鉄が玉泉路(駅名)を出てしばらくすると、車内の電灯が消えた。停電のようだった。しばらくすると、地下鉄は駅に停車した。

駅も停電しているらしく、非常灯の赤く暗い明かりがぼんやりと駅を照らし出していた。地下鉄から出てゆく人たちが小声で挨拶を交わすのが聞こえた。

停車駅

ドアが閉まり、地下鉄が走り出した。すると電灯がともり、車内は明るくなった。車両内には彼ひとりだけになっていた。

次の停車駅を告げるアナウンスが流れた。

アナウンスは次の停車駅は八宝山(駅名)だと告げた。

彼は愕然とした。八宝山は玉泉路の次の駅なのだ。車内の路線図を確認したが、やはり八宝山と玉泉路のあいだには、駅はなかった。

では玉泉路の次に停車したあの駅は何だったのか?

不可解な事実

後日、彼は鉄道関係の部門に勤める友人に内部事情を訊ねた。

中国の地下鉄には軍事上の理由から、普段は使われない駅があると言われている。そのような駅は「消失駅」と呼ばれる。

彼はあの日、何らかの理由で消失駅に停車したのではないかと考えたのだ。

しかし友人の答えは期待はずれだった。八宝山付近には消失駅はないというのだ。

やはり彼は、あるはずのない駅を見ていたのである。

恐らくそれは霊界との結節点であろう。もしも「あるはずのない駅」で下車していたら、彼は「この世」の存在ではなくなっていたはずだ。

無頭死体

北京の地下鉄では、始発電車が走る前に線路の点検のための列車が走るそうだ。

ある日の朝、帰ってきた点検の列車に異常が発見された。

車両の内部に生々しい血痕が残されていたのだ。

すぐに調査を開始したところ、10号線の線路わきに袋状の物体が発見された。

目視により、犬の死体だと判断された。

営業時間が迫っていたため、当日の営業が終わってから死体を回収することになった。

回収

その日の晩、2人の男性が死体回収に向かった。

近づいた若い男性は、その場で嘔吐したという。犬の死体だと思われていたのは、四肢と頭部を失った人間の死体だったのだ。

なぜ地下鉄の構内に死体があったのか?

徹底的な調査が始まった。地下鉄構内には夜間も監視カメラが作動している。しかしいくら調べても、人の出入りは確認できなかった。

事故なのか事件なのか、死体の首や手足はどこに行ったのか、なぜ死体は線路のわきにあったのか。全ては今でも謎のままである。

なお、死体の身元は、いまだに不明だそうだ。

付記

北京の地下鉄には他にも多数の奇妙なうわさがある。他の地域の地下鉄にも、この手のうわさ話はあるが、北京には特に多いようだ。

長い歴史があり、王朝の交代劇を経験した土地だけに、北京の土地には大量の血が滲んでいる。

北京は何かしら恐ろしい現象が起きても不思議ではない霊的な「磁場」をもつ土地なのである。

Posted by 編集長 妙佛大爺

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