Financial Timesの記事
イギリスのFinancial Timesが、四川省の洪水の影響でビットコインのマイニングが停滞し、世界のビットコインのマイニングが8から10%ほど減少する可能性があると報道したそうだ。
記事のURL
Sichuan floods blamed as cryptocurrency mining ‘hashrate’ dips
Louise Lucas in Hong Kong and Emily Feng in Beijing July 9, 2018
四川省でのマイニングは本当に洪水の影響を受けているのだろうか?
この点についての中国での報道を紹介しよう。
中国でのマイニング
2017年7月の時点で、世界のビットコインのマイニングの58%が中国で行われていたようだ。
四川省には水力発電所が多く、電気代が比較的安い地域がある。多大な電力を消費するマイニングを行うには絶好の環境があるのだ。
確かに四川省の阿壩(アバ)などには大規模なマイニング工場がある。
ある報道によれば、中国全土のマイニングのうち70%が四川省で行われているというのだ。
6月の洪水により、これらの工場が浸水したのであれば、確かにマイニングの総量に大きな影響を与えた可能性がある。
Financial Timesの記事が出た直後は、中国でも四川省の洪水によって、マイニングが停滞しているという記事が散見された。
しかし最近の記事を読むと、どうやら実情は報道とは異なるようだ。
四川の実情
四川省で大規模なマイニングを行っている業者によると、洪水で被害を受けた工場は非常に少ないそうだ。
そもそも四川省で操業する大規模なビットコイン・マイナーにとっては、洪水の発生は想定の範囲内である。
毎年のように発生する洪水の影響を受けないように、最初から安全な土地に工場を設置しているのだ。
今回の洪水も大規模なマイナーにはほとんど影響がなかったようだ。
全ては正常(一切经营活动都正常)だそうだ。
彼らの工場には浸水の恐れはない。最も懸念されるのは発電所のトラブルだ。もしも電力の供給が途絶えたらマイニングがストップしてしまうからだ。
しかし発電所もかなり堅牢に設計されているため、電力供給が途切れる事態も発生していないそうだ。
大規模なマイナーは、四川省の洪水の時期と世界のマイニング総量の低下の時期が一致したのは、単にビットコイン価格の変動により、採算がとれなくなった業者がマイニングを見合わせた結果だと分析している。
中国でのマイニングは「おいしい」事業なのか?
かつてビットコインのマイニングは「暴利」を生むと言われていた。
しかし現在の中国ではそれほどおいしい仕事ではなくなっているようだ。
ビットコインの価格はピークからかなり減額となっており、マイニングに必要な電力は増大している。
1000台のマイニング・マシンを1月稼働させて、およそ10ビットコインをマイニングできるそうだが、電気代その他の経費を差し引くと、利益は5万元(およそ80万円)ほどにしかならない。
マイニング・マシンの購入費用などを考えると、現在の中国でマイニング事業を立ち上げようとすると、赤字になる可能性が強いそうだ。
ちなみに工場立ち上げには高圧線の敷設や変電所の設置費用なども必要である。
また掘り当てたビットコインを現金化するためのシステムは常にハッカーに狙われている。
もはや中国でもマイニングは儲からない仕事になっているようだ。