30年間寝かせる豚肉「臭猪肉」の作り方

富の象徴

四川省・雅江県には壩人と呼ばれる人たちが住んでいる。

彼らはチベット人の末裔だそうだ。

中国では独特な言語を持ち、独特な文化を持つ人々として有名である。

もちろん彼らには独特な食文化がある。

そのひとつが臭猪肉である。

現地では「古い豚肉」と呼ばれているそうだが、中国では一般的に臭猪肉という名で知られている。

彼らの言葉をそのまま日本語に訳せば「ブタの熟成肉」ということになるはずだ。

しかし熟成の年月が異常なのだ。

少なくとも10年、長いものは30年も寝かせるのである。

それだけの時間寝かせておけるのは、その家が豊かだからだ。だから臭猪肉は富の象徴と考えられているそうだ。

それにしても10年単位で寝かせる臭猪肉とはどのような食品なのだろうか?

作り方

臭猪肉を作るには、まるまる太ったブタを一匹使う。

縄でブタの首を〆た後に胸の部分に小さな切り口を作る。そして心臓を裂いて血抜きをするのだ。

その後、内臓を全て取り出す。

内臓を抜いた空間にムギなどの穀物を詰めてから切り口を縫って塞ぐ。

次に鼻や口など全ての穴を灰と泥を混ぜたもので塞ぎ、もみ殻の中に10日ほど埋めて湿気を除く。

それを取り出して天井から吊って保存するのだ。

そのまま放置しておくだけで、かまどの煙と家についたカビの作用で熟成するのである。

食べ方

現地で最も好まれるのは、そのまま食べる食べ方だそうだ。

つまり生ハムのような食べ方なのだが、見た感じでは生ハムとはかなり質感が異なる。

やはり10年以上も保存するので、水分が抜けてジャーキーのようになっているようだ。

中は空洞になっている

作り方もミイラの作り方に似ている。どうしても干し肉のような仕上がりになるのは避けられないだろう。

煮たりスープにして食すこともあるそうだ。

スープのほうがダシが出てよさそうだが、それよりも硬い肉を噛みながら味わう旨味のほうが、彼らにとっては魅力的なのかもしれない。

もともとは戦争に備えて作られた保存食だったようだが、現在では食べたいときに少しづつ切って食べる日常食になっているそうだ。