貴州印江紅棺葬

特殊な埋葬習慣

貴州省の印江には特殊な埋葬習慣がある。

埋葬の期日や埋葬の地点は陰陽先生(呪術的な能力者)が決めることになっているのだ。

陰陽先生は先祖あるいは師匠から代々受け継いできた秘儀によって、死者にとって最も適した期日と埋葬地点を決定するという。

紅棺葬

印江の棺は朱色に塗られている。そもそも朱色の棺は皇族の特権であった。なぜ印江では一般的に朱塗りの棺が用いられるのだろうか?

これにはひとつの伝説がある。

唐の時代のことである。

印江の貧しい家庭に生まれた曹という男性が科挙に合格した。

皇帝に謁見を許された曹は皇帝に実家の状況を問われた。

これに対して曹は詩を吟じて答えた。その詩の中で曹は実家の様子を余りにも誇張して表現した。

貧しい実家とはかけ離れた壮麗かつ豪華絢爛な様子を歌ったのである。

これを聞いた大臣は皇帝に次のように上奏した。

曹は優れた才能をもつ男であり、曹の実家の権勢は余りにも秀でております。あのような男を放置しておけば、いずれは皇帝陛下にとって代わる惧れがあります。直ちに処刑するべきでございます。

これを聞いた皇帝は曹を処刑してしまった。

その後、皇帝は曹の実家が挙兵することを恐れて6万の軍勢を曹の実家に向かわせた。

この結果、曹の実家が貧しい農家であることが判明したのである。

このことを知った皇帝は曹に朱の棺を賜り、貴人と同様の礼にのっとり埋葬したそうである。

この時以来、印江には荘重な埋葬の儀式が伝わり、朱の棺が用いられるようになったそうだ。