文字コンテンツを食い潰す盗文サイトの秒盗

盗文サイト

かつての中国にはコピー本が溢れていた。

売れ行きのよい本があると、それをそっくりそのままコピーした本が廉価で出回るのだ。こういう本を盗版という。

しかし盗版が溢れていたのは昔の話である。現在の中国では小説などの文字情報はネットにアップされるようになっている。

その中には無断でコピーした小説を無料で公開しているサイトも少なくない。他人のコンテンツをアクセスを稼ぐツールとして利用しているのだ。

特にネット小説が違法コピーされる率はほぼ100%に達しているという。

このようなコピーをアップロードしているサイトを盗文網駅(盗文サイト)という。

秒盗

盗文サイトはコピー、テキストの打ち込みによる修正、デザイナー、サイト管理者などの分業により運営されている。

正規のサイトに小説の新しい章がアップロードされると、まもなく中国全土の盗文サイトに同じ文章がアップロードされる状況なのだ。

あまりにも早くコピーがアップされるので、この違法行為を中国では秒盗と呼んでいる。

違法サイトであるにも関わらず、最新の小説を探すユーザーの検索にかかるように、SEO対策の人員まで参加している。

また自サイトのPVを示して広告を勧誘する営業部門を抱えている組織もあるそうだ。

さらに凄まじいのがサイト管理者の意識だ。

作者の抗議に対して「我々の行為は正当だ。お前の作品を自動コピーするコードはすでに完成している」と、悪びれる様子もない。

法不責衆

盗文サイトは初期投資がかからず、しかもかなりの利益を稼ぎ出すらしい。ひと月の収入が日本円換算で数百万円になるサイトもあるというのだ。

当然、次から次へと盗文サイトが乱立している。

しかも中国では著作権の評価額が低いので、裁判をして損害賠償金を獲得しても裁判費用の方が高くなり、赤字になってしまう。

違法行為があまりにも多いと、それを禁止する法律が無意味になる。この現象を中国では法不責衆[fǎ bù zé zhòng]という。

著作権問題はまさしく法不責衆。従来の法律だけで解決できる問題ではない。

文字コンテンツの将来像

現在のところ、日本語と中国語の機械翻訳の水準は低い。特に小説の翻訳などは不可能にも思われる。

しかし囲碁ソフトの成長ぶりを思い出していただきたい。

かつて囲碁ソフトといえば初心者の暇つぶしにすらならないほどの低レベルであった。

ところがたった数年でグーグルが開発した囲碁AI・アルファGoが、世界最高レベルの棋士に勝利してしまったのだ。

AIは不可能と思われていたことを可能にしてしまう。

つまり自動翻訳された日本語コンテンツがコピーされる日はいつか来るのだ。

そのような時代になっても、人間の創作意欲はなくならないだろう。創作意欲に背中を押されて作り出された作品は、別の誰かの収益のために利用される。

そのような搾取が世界規模で行われるようになる日は、もう目の前に迫っているのだ。