実刑判決を受けた日本人
2015年に中国で逮捕されていた愛知県出身の男性が間諜(スパイ)罪などの罪で有期徒刑(日本の懲役に相当する)12年の判決をうけた。
この男性は遼寧省・大連市の温泉開発コンサル会社の責任者である。
海南で2名の同僚とともに無許可で地質調査を行ったことがスパイ活動に相当すると判断されたようだ。
なお山東省での地質調査が逮捕の理由だとする報道もある。
この会社の職員は少なくとも山東省と海南の二か所で地質調査を行っていたようであり、どちらの調査がスパイ活動と判断されたのか、あるいは二か所で行った調査が両方とも問題視されて有罪になったのか、情報が交錯している。
なお海南にも山東省にも軍港があることから、現地の地質に関する情報は軍事機密に相当するそうだ。
2015年以来、少なくとも8名の日本人がスパイ容疑で身柄を拘束されているようだ。
この判決を受けた男性は8名の中で7番目に起訴された人物だそうだ。
以上の内容を伝えるURL
上は海南の調査が問題だったと伝え、下は山東省での調査が問題だったとしている。
http://www.guancha.cn/internation/2018_07_10_463474.shtml
http://www.haijiangzx.com/2018/0626/1980207.shtml
奇妙なことに中国で報道されているニュースのソースは、ほとんどが日本のメディアによる報道である。
どうやら中国のメディアは、独自の取材では特に目新しい情報を入手していないようである。
中国での論評
中国のメディアは単に事実のみを伝えているケースもあるが、次のような背景説明をしている記事も見られる。
それによると、共同通信社が中国の空母の鮮明な写真をウェブサイトにアップロードしたことがあり、そのことが中国当局を「震怒」させたというのだ。
撮影が禁止されているはずの鮮明な写真を何者かが共同通信社に提供したことになるからだ。
それ以来当局は軍事機密の情報漏洩に敏感になり、そのことが日本人逮捕の原因になっていると分析している。
この分析をアップロードした記者は、逮捕された日本人は故意にスパイ活動を行ったわけではないが、この時期にスパイ活動と解釈されるようなことをしたのがマズかったと言いたいようだ。
上記内容を伝えるページのURL
http://baijiahao.baidu.com/s?id=1580679629260430322&wfr=spider&for=pc
付随して報道されている内容
少し古い記事(2015年)によると、2012年から記事が書かれた時点までに十数名の日本人がスパイ容疑で逮捕されていたようだ。
その記事は日本の共同通信がそのように報道しているとしている。
彼らは公安調査庁に協力していた民間人であり、記事が書かれた時点ではすでに全員が帰国していたとされている。身柄拘束期間は数日から数か月だったようだ。
もちろん公安調査庁はこの情報を否定している。
逮捕された人の中には次のような人たちがいたそうだ。
神奈川県在住の脱北者(浙江省)
北海道札幌の男性(北京)
新宿の日本語学校の女性(上海)
記事のURL
http://news.163.com/15/1130/09/B9LLOB040001121M.html
日本政府はスパイ活動を行っていないと公言している。
日本国民も政府がスパイ活動を行っているという話は聞いたことはないだろう。
もちろんスパイ活動は密かに行う行為だから当然なのかもしれないが、日本政府が海外でスパイ活動を行う胆力があると考えている人は少ないだろう。
ところが今回の事件をきっかけにして、中国では次のような報道がなされている。
その記事によると産経新聞がかつて次のような記事を掲載したことがあるというのだ。
中国残留孤児であった40歳の男性が日本の外務省の依頼を受けてスパイ活動を行い、収集した情報を十数回にわたって外務省に提供していた。報酬は10万円から20万円だったそうだ。
その人物はスパイ活動に不安を感じたため、外務省に身の安全を確保してくれるように要求したところ、もしも逮捕されたら外交ルートで救出するとの約束を得た。
その男性は後に中国で逮捕され、北京の監獄7年間で服役することになった。少なくとも彼自身の認識によれば、外務省は彼を見捨てたようだ。
男性の告発に対して外務省は論評を控えているという。
以上の内容を伝えるURL
https://news.china.com/domestic/945/20170523/30556543_1.html
このような報道があったこと自体、この記事を読むまで知らなかった。
我々が知らないところで日本政府もスパイ活動を行っているのかもしれないが、恐らく国家公務員が直接スパイ活動を行うような危ない橋を渡るのではなく、一番危ない情報収集活動は民間人にアウトソーシングしているのだろう。
その事情を知っている中国当局は疑心暗鬼になって、全く関係ない日本人にもスパイの疑いをかけているのかもしれない。
付記
この記事は100%中国での報道をもとに作成した。
共同通信社が本当に空母の写真をアプッロードしたのか、産経新聞が本当にスパイ活動を行った男性の告発を掲載したのか確認してはいない。
ただし中国で以上のような記事が掲載されていることは事実である。
なお、中国の記事は場合によっては削除されたりアクセス不能になることがある。
URLを示した全ての記事は2018年7月11日現在アクセス可能であるが、後にリンク切れになるかもしれないので、元の記事を確認したい方は早めにアクセスしてコピペ保存することをお勧めする。