動物の体内から現れる至宝

破格の漢方薬

少量で非常に高価なものと言えば宝石が思い浮かぶ。ダイヤモンドやルビーなどの宝石は日本、中国、東洋、西洋の区別なく珍重される宝だ。

その一方で中華圏でだけ珍重される高価な宝物がある。それは漢方薬である。にわかには信じられない話かもしれないが、事実なのである。

アフリカでサイが密猟される理由をご存じだろうか?

サイのツノは犀角(さいかく)という名の漢方薬なのだ。1本の対価で高級マンションが買えるほどの値段になる。

サイの密猟は犀角を入手することが目的なのだ。だから殺されたサイは頭部のツノの部分だけが切り落とされた姿で放置されるのである。

このような残酷な殺戮を地元の政府は必死に取り締まっている。しかし地下市場で巨額のマネーが動くため、いくら取り締まってもサイの密猟はなくならないのだ。

高価な漢方薬は犀角だけではない。

天然の朝鮮人参は1本で1億円以上の値段がつくこともある。現在の中国では天然の朝鮮人参は非常に希少であり、発見されればオークションにかけられて売買されるのだ。

巨額で取引される漢方薬は必ずしも薬として使われるわけではない。投資目的で売買されることもあれば、富豪のコレクションとして収蔵されることもある。また高級官僚への贈答品になることもあるのだ。

中華圏では希少な漢方薬は、ゴールドや株式以上に有望な資産であり、財産なのである。

三宝

古くから珍重されて来た希少な漢方薬の中に三宝と呼ばれるものがある。三宝とは馬宝、牛黄、狗宝の3種の漢方薬の総称だ。

いずれも動物の体内にごく稀に存在する物質である。

馬宝[mǎ bǎo]は馬の体内に形成される石のような物体である。馬糞石、黄薬、鮓答(さとう)などの別名で呼ばれることもある。

馬宝の正体は馬の腸内にできる結石であると言われている。結石の形成は偶然に左右されるので、ひとつひとつの形状や品質は全て異なる。それに応じて価格も変動する。

オークションでの落札価格を見ると、高いものは日本円で数千万円の値段がついている。

牛黄[niú huáng]は日本語で「ごおう」と読まれる。

牛黄は現在の中国では比較的使用頻度が高い漢方薬だ。ただし本物の牛黄ではなく牛の胆汁で代用しているのだ。本物の牛黄はあまりにも高価なので通常は薬として使われることはない。

牛黄の正体は牛の胆結石である。天然の牛黄は非常に高価である。特に大きなものは珍しい。300グラムを超える牛黄に日本円で1億円以上の値段がついたこともある。やはりオークションでの価格だ。

狗宝[gǒu bǎo]は犬の胃の中などで生成される石のような物体だ。通常は1センチから5センチくらいのオリーブ形をしている。表面はなめらかで爪で傷がつくほどの硬さである。

価値があるのは中心のわずかな部分だけであり、その重量はせいぜい2グラムから7グラム程度しかないという。高齢の犬ほど大きな狗宝を持っている確率が高いそうだ。

天然の狗宝のオークション落札価格を見ると、やはり日本円で数千万円の値段がついている。

鶏宝

動物の体内から得られる希少な漢方薬は三宝だけではない。実はニワトリの体内にも石のような物体が生成されることがあるのだ。

それを鶏宝 [jī bǎo]という。

鶏宝の正体については諸説ある。ひとつは馬宝や狗宝と同じように結石であるという説だ。

もうひとつの説は卵胞の異常発育説である。

本来なら卵巣内で育つはずの卵胞が腹腔内に侵入し、そこで大きく発育したものが鶏宝だというのだ。卵の黄身の部分に相当するものが腹腔内に形成され、それが硬化すると鶏宝になるということだ。

このような現象は結石ができるよりもさらに発生頻度が少ないだろう。それだけ珍しいということになる。

鶏宝には卵の黄身とそっくりな色と形のものがある一方で、石のようなものもあると言われている。

恐らく鶏宝には卵胞から形成されるものと、結石と同じメカニズムで形成される2つのタイプがあるのだろう。

一攫千金

福建省に恵安県(けいあんけん)という土地がある。世界史でも習う港町・泉州(せんしゅう)に属する街だ。花崗岩の産地であり、日本に墓石などを輸出している。

その恵安県で鶏宝が発見されたというニュースが報道されたことがある。鶏宝の発見はそれほど大きなできごとなのだ。その概略を紹介しよう。

恵安県の螺陽鎮(らようちん)という小さな村でのことだ。

ある女性がニワトリを絞めて解体したところ、腹の中から卵の形をした不思議な物体が現れた。

それは内臓のようにも見えるが、普段からニワトリを解体している女性は、これはただの内臓ではないと気が付いた。

その女性は以前新聞で鶏宝の記事を読んだことがあった。それはニワトリの腹の中にある非常に珍しく高価な薬であり、城ひとつと同じ価値があるとすら言われるほどの宝だというのだ。

女性はさっそく上海のオークション業者4社に写真を送って鑑定を依頼した。その結果、女性が発見した不思議な物体が鶏宝である可能性はおよそ90%であるとの結論を得たのだ。

もしこれが本物の鶏宝であれば、最高1750万元(日本円換算でおよそ2億8千万円)の価格がつく可能性があるという。

高価な漢方薬の発見は中国ならではのチャイニーズ・ドリームだ。中国の田舎には家畜を捌くたびに一攫千金の夢がある。

Posted by 編集長 妙佛大爺

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