女子大生の死体を蹂躙した煎餅屋の正体

石家庄の煎餅屋

河北省の省都である石家庄(せっかそう)に青園街と范西路という道路がある。

青園街は南北に走り、范西路は東西に走っている。どちらも石家庄の中心部の道だ。

このふたつの道路が交わる地点に1軒の煎餅屋があった。

煎餅は日本語のモチ(餅)とは異なる食べ物だ。この店では米の粉を水で溶いてクレープ状に焼いたものを売っていた。

煎餅

Gの店は立地の良さも手伝って、かなり繁盛していたようだ。

この店は男の主人Gとふたりの女性K、Sの3人で営まれていた。

まじめな商売人のように見えたGには、実は裏の顔があった。

凶悪犯

Gは凶暴な犯行を平然と行う犯罪者だったのだ。

かつて仲間とふたりでガソリンスタンドに強盗に入り現金を奪っていた。また他人の家に爆発物を仕掛けて脅迫し、5万元を要求したこともある。

これらの犯行によってGは公安から追われていたのだ。

どちらも石家庄の中心からそう遠くない晋州市で行われた犯行である。

Gは大胆な犯行を重ねた土地の近くで、のうのうと商売を営んでいたのだ。

家庭教師の依頼

Gの店の常連客の中にPという26歳の女性がいた。この年齢で女子学生であったそうだから、大学院に通っていたのだろう。

Pには欠点があった。自慢話が多すぎたのだ。

父親が建築会社を経営していて非常に豊かであることや、兄が若くして豪勢な不動産を所有していることなどをGに対しても公言していた。

Gの商売は成功していたが、贅沢な暮らしができるほどの利益は上がっていなかった。

後に取り調べに対して「俺は生活レベルへの要求が高い」と語ったGは、資産家の娘であるPに目を付けた。

Gは家庭教師を頼みたいという名目でPを呼び出した。

もともと面識があったPは警戒せずにGの部屋を訪れ、そのまま監禁されてしまったのだ。

GはPの家族に身代金30万元を要求した。日本円に換算すれば5百万円弱である。

Gは当初からPを開放するつもりはなかったようだ。身代金を要求した当日、GはPを殺害した。

その後、死体を切り分け、ステンレス製の大きな桶で煮たのである。

煮た後の死体は発泡スチロールの箱に分けて入れ、槐底村のゴミ置き場に捨てた。槐底村はいわゆる「村」ではなく石家庄中心部(やや南)の地名である。

不気味なのは頭部の処理である。

GはPの頭部を鈍器で叩いて潰し、店の目の前のゴミ置き場に捨てたと言うのだ。

結局Gは身代金を手にすることはできなかった。Pの自慢話は誇張された話だったようだ。

第2の犠牲者

Pを殺害した経験によって、家庭教師を依頼するという名目を使えば、簡単に女性を監禁できると考えたようだ。

Gは河北師範大学の校門付近に行き、24歳の女学生Lを同じ手口で家に呼んだ。

学生にとって家庭教師は効率の良いバイトである。案の定、LはGの言葉を信じて自ら罠に飛び込んできた。

LもPと同じようにGの部屋に監禁されてしまったのだ。

Pを殺害したときは30万元の身代金を要求したが、その金額ではすぐに用意ができないと考えたようだ。

GはLの家族とLの教官に脅迫電話をかけて2万元の身代金を要求した。

その3日後、GはLを殺害して死体を切り分けた。一部は槐底村のゴミ置き場に捨て、頭部と手足は出身地である晋州市に運び、2か所に分けて遺棄した。

結局このときも身代金を受け取ることはできなかった。

Gの犯行は粗暴なだけで思慮が足りない。

そもそも身代金目的の誘拐は、現金の引き渡しの際に検挙される可能性が高い犯罪だ。よほど治安の悪い国でなければ成功する可能性は低い。

家族を脅迫すれば公安に通報しない可能性もあるが、大学の教官に身代金を要求すれば、公安に通報されるくらいのことは誰でも想像ができる。

恐らくGは「思い付き」レベルの計画を実行したのだろう。

少し考えれば思いとどまるべき犯罪に手を出してしまうような人間が一番怖いのだ。