愛人100人!巨額収賄で死刑判決

頼小民

2021年1月29日、中国国有の不良債権処理会社である中国華融資産管理(華融)の元会長・頼小民の死刑が執行された。

罪状は収賄罪、重婚罪など。

頼小民には100人以上の愛人がいて妻以外の女性と複数の非嫡出子をうけていたとされている。

中国の刑法によると収賄罪は死刑の対象ではあるが最近では経済犯罪に死刑が適用されるケースは少ない。

死刑が適用されても「死緩」という付帯判決により、実質的には無期懲役になるケースがほとんどだ。

しかし頼小民には極刑が適用された。

天津市第2中級人民法院が2021年1月5日に死刑判決を言い渡したのち上訴は却下された。

最高人民法院は判決から3週間余りで死刑執行を命じたため実際に死刑が執行されたのである。

なお、全ての個人財産も没収されている。

国有企業で何が起きていたか

裁判で認定された収賄額はおよそ17億9000万元。この額は習近平政権発足後に発覚した汚職としては最大規模である。

頼小民は2008年から2018年の間に金融監督官庁の幹部や華融の会長職に就いていた。つまり頼小民の本質はビジネスマンではなく経済官僚である。

頼小民は巨大な権限を利用して融資や人事異動などに関して便宜を図り、その見返りとして総額17億9000万元の賄賂を受け取ったとされている。

捜査開始の時点で押収された現金はおよそ”3トン”もあったそうだ。

香港の財神爺

頼小民は香港の経済界では”財神爺”つまり”おカネの神様”と呼ばれていたそうだ。

十分な担保を提供できない経営者でも頼小民とのコネができれば巨額融資を受けることができるからだ。

言うまでもなくこのような”人間関係”に基づく融資は華融の不良債権を肥大化させ華融の経営危機を招くことになる。

なお、融資を受けたのは香港の商人だけではなく中国各地の商人が香港で頼小民と会っていたようだ。

名前をおぼえられないほどの愛人たち

頼小民には100人もの愛人がいたとされているが、あまりにも数が多くて本人ですら正確な数字は把握していなかったと言われている。

その多くの愛人たちを頼小民は大きくふたつのグループに分けていたそうだ。

ひとつが正N号、もうひとつは補N号だ。

正N号は関係が緊密な愛人たちであり、正1号、正2号…と名前ではなく番号で把握されていたというのだ。

なお正1号の女性は頼小民とのあいだに双子をもうけている。

補N号はほぼ肉体関係だけの愛人であり、やはり補1号、補2号…と番号で把握されていたそうだ。若い愛人たちはこちらに分類されていたようである。

頼小民の愛人の中には複数の芸能人も含まれていたことから、その方面からも頼小民の事件は注目を集めていたのである。

中国華融資産管理

頼小民の事件は日本での知名度は低いが中国経済情報としては恒大問題と同程度に注目されている。その点に触れる前に華融設立からの流れを紹介する。

1999年11月1日:前身である中国華融資産管理公司が成立。

アジア経済危機の際に国有銀行改革の一環として設立された四大資産管理会社(不良債権の受け皿)のひとつである。

2009年 1月  :頼小民が華融の党委副書記、総裁に就任
2012年 9月28日:株式会社化。この時点で頼小民がトップに就任している。
2015年10月30日:香港に上場
2021年 1月29日:頼小民・元会長の死刑執行

事件の捜査と並行して華融が保有する資産(貸付金)のリスク再評価が開始されたと推測される。

2021年 3月  :2020年の決算報告延期。香港市場で華融株は売買停止。
2021年 4月  :2020年の決算報告再度延期
2021年 8月19日:2020年の最終損益が1029億元の赤字になったもようだと発表した。

赤字の理由として新型コロナウイルスの感染拡大による顧客の債務履行能力の低下が挙げられているが、さらに頼小民が肥大化させた貸付金のリスク再評価による不良債権処理で多額の損失を計上したことも挙げられている。

華融の経営が破綻すれば中国の金融システムに打撃を与える可能性があるため、CITIC(中国中信集団)などを対象に新株を発行し資本注入する方針が報じられている。

新株はCITICのほか、中保投資、中国人寿資産管理、中国信達資産管理、遠洋資本控股が引き受けるとの情報も出ている。

華融は上場企業であり海外からも資金調達を行っているため、業績の悪化(最悪の場合は破綻)は中国経済全体に影響を与えるだけではなく、海外の投資家にも大きな影響を与えることになる。

いまは企業の救済スキームが注目されているが倒産を免れた後には投資に値するだけの収益を確保できる企業なのかという点が厳しく評価されることになるだろう。

なお現在のところ華融の上場は維持されている(2022年8月)。