【残酷料理】醉虾とその仲間たち

エビの禁菜

醉虾[zuì xiā]は日本では酔っ払いエビと呼ばれている。

この食べ方は中国の十大禁菜(残酷料理)のひとつとされている。エビを生きたまま酒に漬けるのが残酷だと考えられているからだ。

しかしながら我々日本人にとっては、イカの沖漬けしかり、シラウオの踊り食いしかり、類似の食文化があり、このような食べ方に強烈な違和感はないと思われる。

むしろ、どれほどの美味なのか興味深いというのが一般的な感覚ではなかろうか?

醉虾を作るには、通常は淡水のエビを使う。

中国の市場では生きた河エビを売っている。それを買ってきて、腸の中のドロが無くなるまで、きれいな水の中で飼っておく。

腸の中の泥は目視できる。背中に黒い筋が見えるうちはまだ早い。

黒い筋が無くなったところで黄酒(日本で一般的に紹興酒と呼ばれるタイプの酒)に漬ける。

このときエビはまだ生きているので残酷だと言われるのだ。

エビの動きが止まったら、さらにニンニク、ショウガ、砂糖、醤油、酢、砂糖などの調味料を加える。

この時の味付けが料理のクオリティーを決定すると言ってよい。

醉虾は上海寧波が本場と言われている。各家庭では自分の好みの味付けがあるようだ。特に甘味の好みには個人差が大きい。

甘めの味付けが好きな人もいれば、砂糖は極力少ないほうが良いという人もいる。

私自身は甘味が強いほうがよいと感じるが、甘みが強いのは邪道だと感じる人もいるようだ。

河エビを食べる習慣があまりない日本ではピンと来ないところがあるが、手長エビを獲れる幸福な人たちは、自分好みの醉虾を作ろことも可能である。

恐らく日本酒を使って醉虾を作れば、中国の醉虾と比べて全く遜色のない醉虾を作ることができると思われる。

醉蟹

醉虾と似た料理として醉蟹[zuì xiè]という料理がある。

醉蟹はいわゆる酔っ払い蟹だ。

醉蟹は江南地区が本場である。通常は淡水のカニから作られる。

もともとは大量に収穫されたカニを保存するために考案された食品だと言われている。

上海などでは家庭で自作することも多い。

まずカニをよく洗い、生きたままアルコール度数の高い白酒に漬けて消毒する。

それを黄酒(日本で紹興酒と呼ばれるタイプの醸造酒)に漬ける。

そのときに香辛料や漢方薬を加えることによって、各家庭の味が生まれるのだ。

通常は蟹の毒を消すと言われる生姜や山椒は必須の香辛料だ。

これに醤油や砂糖が加わる。

いわゆるカニ味噌のねっとりとした食感が独特であり、残酷料理と言われながらも廃れる気配はない。

既製品も販売されているので、中国に住んでいればいつでも賞味できる珍味である。

酔泥螺

酔泥螺(すいでいら)は泥螺という殻が非常に薄い海産の貝から作られる。

酔泥螺

ちなみに泥螺には吐鉄の別名がある。

砂鉄のように黒い砂の中に棲んでいて、桃の花の咲くころに体内の砂を全て吐き出すと言われている。

泥螺は汽水域に生息する貝であり、中国では寧波や遼寧省の東港が本場である。

酔泥螺は残酷料理というほどのものではないが、醉虾、醉蟹と同様に、黄酒に漬けて作るという共通点がある。

酔泥螺は中国では非常にポピュラーな食品であり、ほとんどのスーパーでは瓶詰の製品が販売されている。

日本人にはあまり知られていないが、酔泥螺は非常に美味である。醉虾や醉蟹にも劣らない味わいである。

機会があれば一度は試してみる価値があると断言できる。