中国軍がカジノを監視する隠された理由

DNAに組み込まれた安全装置

適者生存は生物進化の原理としてよく知られている。環境に適応した種は生き残り、適応しない種は淘汰される。

この自然選択によって、環境にフィットした種が繁栄するのである。

しかし特定の環境に最適化された生物には大きなリスクがある。急激な環境変化が起きたときに絶滅する恐れがあるのだ。

実際に生物進化の過程では、環境の変化によって絶滅した生物種は数知れない。環境に最適化されることは、生存どころか死への片道切符でしかないのだ。

そのような生物は1000年に1度、あいは1万年に1度という環境変動によって地球上から消えてしまう運命にある。

現在地球上に生き残っている生物には、適者生存とは異なる原理が働いているのだ。それは絶滅回避原理だ。

絶滅回避原理にはいくつものサブカテゴリがあり得る。

例えばリスク分散は絶滅回避原理のひとつである。

モンシロチョウが同じキャベツ畑にたくさんの卵を産まないことをご存じだろうか?

同じところに卵を産めば、産卵に費やすエネルギー消費は抑制できる。しかしその土地に災害が起きれば子孫が全滅するリスクがあるのだ。

現在の地球上には、卵を分散して生むことにより、子孫全滅リスクを回避する本能を具えたモンシロチョウだけが生き残っているのだ。

またバッファを保つのも絶滅回避原理のひとつである。

多くの哺乳類は子供の数が他の生物よりも少ない。可能な限り子孫の数を増やすDNAを持った哺乳類が出現すれば、その哺乳類は圧倒的に繁栄するようにも思われるが、そうはならないのだ。

環境に存在するエサの量に対してギリギリまで個体を増やすような適応をすると、環境変動でエサが減ったときにエサの取り合いになり、絶滅の危険が高まるのだ。

自然界の動物は全てエサがかなり減っても問題ないくらいのバッファを保っているのだ。

以上のように地球上の全ての生物は、リスク回避的な性質を具えているからこそ生き残っていると言ってよいのだ。

人間の行動様式

人類も地球上に生き残っている生物の仲間である以上、生まれつきリスク回避的な性質を具えている。

つまり人類は本能的には「生きるか死ぬか」のリスクを回避する性質を持っているのだ。

例えばふたつの箱を用意して、一方に当たりと書いた紙、もう一方にハズレと書いた紙を入れる。

当たりを引いたら1億円がもらえるが、ハズレを引いたら死ぬという賭けを想定したとき、この賭けを回避するのが人類を含めた地球上の生物の「正しい」行動様式なのだ。

良い結果が出たときにその結果がどれだけ良くても、悪い結果が出たときに死ぬ可能性がある場合はそのリスクを回避する。

それが生き残りのための必須条件なのだ。

人類の場合は回避すべき「死」は生物学的な死に限られない。社会的、経済的な死に対しても回避的な行動をとるのが人類の本能なのだ。

ただし本能には個人差がある。

リスク回避本能が強い人と弱い人がいるのだ。それを見分けることができるのはカジノだと言われている。

場に朽ちる人たち

人類には「死」のリスクを回避する本能があるため、通常は「この勝負に負けたら全財産を失う」という賭けを回避するのがスタンダードな行動様式である。

全財産を失うことは経済的な「死」を意味するからだ。

実際にカジノでの勝負に全財産を投じる人は極めて少数派である。

しかし少数であるが人生を賭けた勝負をする人がいる。そういう人にはふたつのタイプがある。

負け続けた結果、追い詰められて大きな勝負に出るタイプと、最初から自信満々に大きな勝負をするタイプだ。

リスク回避本能が弱いのは後者のタイプである。

前者は大きな勝負に出た時点ですでに後戻りできない状態になっているため「負ければ全てを失う」リスクを負っているのではない。

このままでは座して死を待つだけなので「勝てば助かる」という賭けに出たに過ぎないのだ。

監視対象

興味深いことに人民解放軍の特務機関が、リスク回避本能が弱い客をリストアップしているという噂がある。

その目的については諸説ある。

ひとつは特殊部隊の構成員をスカウトするためだという説だ。

リスク回避本能は生物としての生き残りには必要な性質なのだが、兵士の資質としては無用の長物だ。

死のリスクを恐れるどころか、意識すらしない兵士がいるとすれば、それは最強の兵士だ。中国軍はそのような素材を探しているというのだ。

もうひとつの説はスケールが大きい。

宇宙開発のための人員を確保するのが目的だというのだ。

中国はすでに月面基地を建設する準備を始めている。

月面基地を建設するには何か月、場合によっては何年ものあいだ、月面で暮す人員が必要になる。

訓練を受けた軍人であれば、この任務を遂行することができそうであるが、実情はそう簡単ではないようだ。

人民解放軍が旧ソ連およびロシアから入手した資料によると、長期間の宇宙滞在は人間の精神に相当な負荷をかけるらしい。

つまり常人には月面開発の任務を果たすことは困難なのだ。

しかしリスクを回避する本能が極度に弱いタイプの人間は、不安や恐怖に強く、一歩間違えば即死亡するという地球外の環境に適しているのだ。

中国軍が宇宙開発のためにリスク回避的なDNAが封印された人間を探している。

この説には強い説得力がある。恐らく人民解放軍の特務機関は、宇宙開発かそれと同等の危険な任務を遂行するための人材を確保しようとしているのだ。