奇妙な紙幣
最近は少なくなったが、一時期の中国では誰かがメッセージを印刷した紙幣が流通していた。
このような紙幣を反宣幣という。「反宣」は、反動宣伝という意味である。
よく見ると法輪功のメッセージが印刷されている。
天が中国共産党を滅ぼすから、すぐに共産党から脱退しろというメッセージと共に、邪党(共産党)脱退ホットラインの電話番号まで印刷されているのだ。
法輪功はこのように公然と共産党に歯向かっていたのだ。
中国が挙国体制で法輪功を弾圧したのも当然である。
日本では法輪功は江沢民に一方的に弾圧された宗教団体というイメージが強く、どちらかというと同情を感じている人が多いだろう。
しかし法輪功は黙って弾圧に甘んじるような団体ではない。中共に対決姿勢を示すほどの集団なのである。
中共と法輪功との関係は、一方が他方を弾圧するという関係ではなく、互いに攻撃し合う関係だったのだ。
共産党政権は現在でも盤石ではない。
民衆の中には共産党への不満が鬱積している。それが法輪功の宣伝をきっかけに爆発する危険が存在した。江沢民はそれを恐れたのだろう。
中共の法輪功弾圧は中共の残酷さを物語るエピソードというよりも、中国における共産党政権の不安定さを示しているのだ。
反宣幣の扱い
中国には反宣幣を流通させてはならないというルールがある。
うっかり反宣幣を受け取ってしまった場合には、銀行に持ち込んで通常の紙幣と交換しなければならないことになっている。
四川省の銀行で窓口の職員が不注意で顧客に反宣幣を渡してしまった事例では、職員は警告を受けた上、5千元の罰金を支払ったという。
反宣幣印刷の摘発事例
反宣幣を作っているのは一般の信者たちのようだ。
武漢で2万枚以上の反宣幣が押収されたケースでは、アパレルショップの51歳の女性が反宣幣を作っていた。
この女性は法輪功に入信して19年目の信者だった。入信のきっかけは気功による健康維持だったという。
入信の当時は法輪功は違法ではなかったが、違法組織に指定されてからも健康のために法輪功の修行を続けていたそうだ。
次第に法輪功の活動にのめり込むようになったその女性は、法輪功組織からの指令に従って、大量の小額紙幣の上にプリンターで法輪功のメッセージを印刷していたのだ。
公安はこの女性を監視下に置き、反宣幣の製造と流通に関係していた法輪功のメンバーを一斉に摘発したのである。
この女性にとって法輪功は精神的な支柱であり、特に共産党に対する反感があったわけではなかったようだ。
この女性が一時期法輪功の活動を中断したときに、首が痛むようになったそうだ。この痛みから解放されたいと考えて、法輪功の活動を再開したのである。
多くの信者は病気から逃れるために入信している。
このような信者は、共産党にとっての脅威にならないと判断されているらしい。
むしろ「法輪功の活動を続けたが、首の痛みは反って悪化した」と言わせることで、反法輪功キャンペーンに利用されている。
法輪功は徹底的に弾圧されているというイメージが強いが、中共の対応は強硬策一辺倒ではなく、硬軟取り混ぜた方式によって法輪功の弱体化を狙っているのだ。
法輪功と中共の関係は、宗教問題ではなく権力闘争だ。中共の意識は、己の存続を賭けた戦いなのである。
どちらかが完全に倒れるまで、この戦いが集結することはないだろう。