日本という名
2012年に江西の大学に「日本」という名の学生がいることが判明して大きな話題になった。
確かに日本は素晴らしい意味を持つ。だからこそ国名になっているとも言えよう。
しかし中国には特殊事情がある。
中国では現在でも抗日ドラマが放映されている。また抗日ドラマは動画アーカイブのジャンルとして定着しているくらいたくさん作られているので、今後もネットユーザーの目に触れ続けることは間違いない。
抗日ドラマの中で日本人は日本鬼子と呼ばれる。このことは日本でもかなり多くの人が知っているくらいだから、中国では常識である。
さらに日本猪という蔑称すらあるのだ。中国語の猪は日本語の豚という意味である。
「日本」と名付けられた彼は、中国にいる限りこのような言葉を避けることはできないだろう。
親はどういうつもりで日本という名を付けたのだろうか?
中国のネット民も不思議で仕方ないようだ。
珍しい姓
ところで「日本」という名の彼の姓は操である。
中国全土に操姓の人がいるらしいが、かなり珍しい姓であることは間違いない。
一説によると操姓の人たちは曹操(そうそう:155年から220年)の子孫であると言われている。
曹操の曹は中国語で[cáo]と発音する。操の発音は[cāo]である。非常によく似ている。
曹操の子孫は世間から身を隠すために発音が似ている操の字を使うようになったというのだ。曹操の子孫であることがバレると、いろいろと不都合があったのかもしれない。
話を元に戻すと、日本と名付けられた彼のフルネームは操日本なのである。
実はこのフルネームこそが炎上の原因なのだ。単に日本という名が注目されただけではないのだ。
とは言っても、どこに炎上要素があるかわかる日本人は非常に少ないだろう。もしもわかったとしたら、バイリンガルか中国語が達者なネット廃人の可能性が高い。
操という字の意味
現在ではほとんど使われない肏という字がある。この字の発音は[cào]である。
この字は性交するという意味である。そういわれてみれば、どのような発想でふたつの漢字が組み合わされたかわかるだろう。
しかも下品な字なので英語の fuck に相当するとされている。
実際に『紅楼夢』などの小説を見ると、猥褻なシーンの会話の中で使われている。
この漢字を使うのは余りにも下品で直接的なので、発音が似ている漢字で代替されるのが一般的だ。
その筆頭が操[cāo]なのである。肏[cào]の発音と非常によく似ているからだ。
操はもともとは、把握する、コントロールする、鍛錬するなど、広い意味を持つ字である。日本語の操作、体操などから連想される意味と共通するのだ。
本来はエロ要素は全くない。
しかし現在の中国ではネット上で操と書くと fuck という意味になるのだ。
この表現は余りにも一般化しているため、もはや婉曲表現ですらなく、国語学者や教育学者が下品な表現としてリストアップしているほどなのだ。
ここで話を戻そう。
以上のような事情があるので、操日本というフルネームは、ネット上では「ファック・ジャパン」という意味になってしまうのだ。
恐らく名前を付けた時点では、このようなネット用語が一般化することは予想できなかったはずだ。
しかし操に思いがけない意味が付与されたことにより、とんでもない名前になってしまったのだ。
中国のネット民は全中国で覇気最大の名前と呼んでいるが、本人にしてみれば嫌で仕方がないだろう。
中国の規定によれば一生に一度だけ改名が許されている。
もしかしたら今ごろは名前を変えているかもしれない。
当サイトとしてはこのケースを中国版「悪魔ちゃん事件」と認定したい。命名は長期的視野に基づいて行うことが大切である。