17歳の看護実習生を夫への「性的供物」にした妻の異常

少女の失踪

2013年7月24日、黒竜江省の樺南(かなん)県で17歳の少女が失踪した。これは数え年なので日本式に言えば16歳の少女である。

中国では彼女の姓名も顔写真もいまだに多数のウェブサイトにアップロードされたままだが、性犯罪の被害者であるから、このサイトでは名前のイニシャルであるIと表記することにする。

Iは黒竜江省林業衛生学校の看護学生であり、当時は樺南県人民医院で看護実習中であった。

Iの家族はSNSなどを通じて行方を捜したが、26日になっても連絡が取れなかったので、樺南県の公安局に通報した。

公安が病院付近の街頭に設置された監視カメラを分析したところ、路上で転んだ妊婦を助け起こすIの姿が発見された。

その画像には、妊婦と言葉を交わしたのち、妊婦に付き添って建物の中に入って行くIの姿も写っていた。

ところがその建物からIが出て来る姿は写っていなかった。

その代わりに、妊婦とその夫らしき男が大きな旅行用ケースを押して出て来る姿が写っていた。Iがその家に入ってから3時間後のことである。

二人はケースを赤い乗用車に乗せてどこかへ走り去っていた。

Iが友人に「妊婦さんを家まで送った」というメッセージを発信していたことから、公安は監視カメラに写っていたのは間違いなくIだと判断した。

通報から2日後の7月28日、公安はIが入って行った家に踏み込み、そこにいた妊婦の身柄を拘束した。

その場に夫はいなかったが、妊婦の証言に基づいて王家村の空き家を捜索したところ、公安職員はまだ寝ている夫を発見した。

妊婦も夫もIを殺害したことはすぐに認めた。

妊婦は同情心を利用して若い女性を家に連れ込もうと計画し、Iの見ている前でわざと転倒したのだ。

案の定、Iは妊婦を助けようとした。Iが看護学生だとは知らなかったようだが、看護学生でなくても妊婦が転んでいるのを見て無視する人は少ないだろう。

結局Iは妊婦の家に連れ込まれ、睡眠薬入りの「飲むヨーグルト」を飲まされて昏睡してしまったのだ。

その後のいきさつは後に説明するが、最終的にIは殺害されてしまった。

犯人はここまではすぐに自白したが、死体をどこに遺棄したかはなかなか白状しなかった。

死体が出てこなければ助かるとでも思っていたのだろうか。

公安の容赦ない尋問が続いた。

結局、夫は逮捕の翌日には死体遺棄現場を自供したのである。

自供に基づいて王家村の荒れ地を捜索したところ、Iの遺体が発見された。

なお、妊婦のほうは、逮捕後間もない8月6日、男児を出産している。

謎の犯行動機

事件直後から犯行の目的、犯行動機について様々な憶測が囁かれるようになった。

そもそもIを家に連れ込んだのは妊婦である。夫に強姦させることが目的であった。

問題はなぜ妻が夫の強姦を手助けしようとしたのかという点だ。

地元の住民は妻が浮気をしたのがバレたため、夫に処女を抱かせることで償おうとしたという噂が流れた。

その一方で、妊娠中は夫の性生活の相手ができないので、代わりの女性を提供するつもりだったという話もあった。

しかしどちらの説も常軌を逸した発想だ。

ふつうは夫に脅迫されたから仕方がなく協力したと考えるのが常識だろう。

しかしこれも正解ではなかった。

裁判で明らかになったことであるが、やはり妻が自主的に夫に協力していたのだ。

未遂事件

裁判手続きの中で、この事件が実は最初の犯罪ではないことが明らかにされた。

犯人夫婦には16歳の娘がいる。その娘が同級生を自宅に連れてきたことがあった。

そのとき夫婦は自分の娘とその同級生に睡眠薬入りの「飲むヨーグルト」を飲ませて昏睡させたのだ。

しかしこのときは夫の「肉体的原因」によって未遂に終わっている。

夫は地元の農村出身だが外見は知識人のように見えたという。

自分の娘の同級生を狙うという異常な犯行に手を付けながら、強姦する直前で体が反応しなくなるわけだから、かなり神経質な面があったのかもしれない。

実はIを強姦しようとしたときも、偶然Iが生理期間中であったため、強姦は未遂に終わっていた。

その後、妻はIを解放しようと言ったそうだが、夫は解放すれば事件が発覚すると言って枕でIの顔を押さえつけて窒息死させたのである。

そのとき妻はIの脚を押さえつけて殺害を幇助している。

妻はかなり積極的に夫に女性を抱かせようとしている。その背景には妻の過去が関係していたようだ。