南京の凶宅:別荘のガレージで何が起きていたのか?

不思議な事件

今回紹介するのは「一人の人物が別々の場所で二度死んだ」奇妙な事件である。

死亡したのはGという男性だ。

Gは甘粛省・蘭州の出身である。日本に出稼ぎに来た後、日本人女性と結婚し、日本国籍を取得していた。

ただしその女性とは間もなく離婚している。

その後Gは日本に留学に来ていた南京出身で8歳年下の中国人女性と再婚している。結婚後にGの妻も日本国籍を取得している。

二人は日本で小さな商売をしていたようだが、当時の日本は不況であったから、中国に戻ったほうがよいと判断したそうだ。

帰国後Gは蘭州に戻って起業資金を集めていた。その最中に南京の実家に戻っていた妻から、子供の具合が悪いから南京に来て欲しいとの連絡が入った。

Gはすぐに南京に向かった。

交通事故

2006年8月19日、Gの自家用車が高速道路を走行中に事故を起こして炎上した。

遺体は外見からは識別が不可能なほど損傷していた。

しかし車の中からGの所持品が発見されたため、公安は死亡したのはGであると断定して、妻にそのことを通告したようだ。

知らせを受けた妻はGの戸籍抹消などの手続きを行っている。

日本の法律では二重国籍は認められないことになっているが、恐らく中国国籍を離脱しない限り、事実上中国に戸籍が残るのだろう。

その後、妻には莫大な保険金が支払われた。

真相

状況証拠からは、誰が考えてもGは死亡しているはずであった。

しかしGは生きていたのだ。

妻から連絡を受けたGは一刻も早く子供に会うために、飛行機で南京に向かったのである。

そして弟に自分の車を預け、南京まで運転して来るように頼んでいたのだ。

車が事故で炎上したため、遺体の識別ができなくなり、死亡したのは車の持ち主であるGであると判断されたのである。

本来なら「夫は生きている」と告げるのが当然だが、公安から連絡を受けた妻は咄嗟に保険金詐欺を思いついたのだ。

そしてまんまと保険金を手に入れたのである。

Gは日本の複数の保険会社の生命保険に加入していたようだ。

ある記事によればトータルで1000万元以上を手にしたという。

日本円でおよそ1億6千万円ほどの金額だ。物価の差を考えれば、その何倍もの現金を手に入れた感覚だろう。

よくあるパターン

保険金を受け取った妻はGに300万元を渡した。日本円で5千万円弱の金額になる。

Gが生きていることがバレれば保険会社から訴えられるだけではなく、詐欺で検挙されることになる。

Gは300万元を受け取る代わりに実家にも妻の家にも立ち寄らず、ニセの身分証明書を使って他人に成りすます生活を始めた。

しかしGはその生活に耐えられなくなった。

しばらくすると妻の実家に顔を出すようになった。親戚づきあいも再開していたようだ。

妻にはパスポートを返して欲しいと要求していたそうだ。

詳細は不明であるが、妻がGのパスポートを保管したままGに渡さなかったようである。

パスポートを使うことによって、Gが生きていることがバレるのを恐れたのだろう。

Gが妻の実家を訪れた結果、妻の祖父や父親にも保険金詐欺の事実がバレてしまった。

このままでは近所の住民にもGが生きていることがバレてしまう。

この状況に対して妻の祖父は邪悪な決定を下した。

Gを本当の死人にしてしまおうというのだ。

殺人死体遺棄

2011年2月26日、Gは再び妻の実家にやって来た。

この時すでに妻の祖父はGを殺害する準備を整えていた。

「孫に付きまとっている以前のボーイフレンドを精神病院に連れて行く」という名目で、三人の友人に助っ人を頼んでいたのだ。

祖父が運転するアウディに乗り込んだGの身柄を三人の友人が拘束した。Gは厳重に縛られてしまったのだ。

祖父は車を走らせ、Gを南京郊外の別荘に連れ込んだ。車には妻も乗っていたというから、6人が乗車していたことになる。

三人の友人は別荘で1200元の礼金を受け取り、タバコを一服してから帰宅している。

その後祖父はGをガレージに移動させ、鈍器で頭を乱打してGを殺害したのである。

祖父は71歳であったが、厳重に縛られたGは抵抗することができなかったようだ。

祖父と妻はいったん自宅に帰ったが、1時間後に別荘に戻って来た。

そして予め用意しておいた中華包丁などを使ってGの遺体を解体し、ビニール袋に入れて別荘に近い翠屏山の山頂付近に遺棄したのである。

結末

死体を遺棄してから間もない2月28日、翠屏山を散策していた二人の登山客がGの遺体を発見して通報した。

公安は指紋や血痕などの手掛かりから犯人を特定した。

2013年12月に祖父には緩期2年執行の宣言が付いた死刑判決、妻には無期徒刑判決が下された。

なお2016年には祖父の刑は無期徒刑に、妻の刑は有期徒刑21年11月に変更されている。

凶宅瑞景文華小区142号

犯行現場となった別荘が被害賠償のために競売にかけられた。

殺人と死体解体の現場となった凶宅を誰がいくらで落札するのか?

この競売は中国全土から注目を集めた。

同じタイプの物件の市場価格は1200万元(日本円でおよそ2億円)だそうだが、殺人事件の現場となった事故物件であるから、競売のスタートはその3分の1ほどの価格だったようだ。

最終的にこの物件は786万元で落札された。

他人に貸すにしても借り手がいないだろうし、自分で住むとも考えられない。

この物件を落札した人物は中国では「神秘人物」と呼ばれている。

おそらく長期保有して値上がりを期待しているのだろうと言われている。