夢のある広告
健康な男性の精子求む
あなたの精子を300万元で買いとります
これはアモイに出現した広告の文言である。300万元は日本円に換算すると4500万円以上になる。
健康な男子が自分の精子を売るだけで4500万円である。
通常はこの時点で疑いを持つ。
しかしこの広告を見て連絡を入れた男性がいるのだ。
彼は人を疑うことを知らない純粋な人物だったのかもしれないし、欲に目がくらんで正常な判断ができなくなっていたのかもしれない。
電話に出たのは「仲介業者」を名乗る人物であった。
仲介業者は精子を求めている女性と連絡するためには仲介費用880元を払わなければならないと言った。
880元は日本円でおよそ1万5千円だ。4500万円に比べれば安い。
男性は当然指定された口座に880元を振り込んだ。これは必然的な経過である。ここで880元を払わない人は、最初から電話などしないからだ。
振り込みを確認した仲介業者は男性の期待を裏切らなかった。約束通り精子を求めている女性の連絡先を知らせて来たのだ。
女性との会話
男性が電話をかけると、精子を求めている女性が電話に出た。ただし電話での会話は当たり障りのないものだった。
電話での会話を通じて女性が好印象を持てば、女性との交際が始まるというシステムなのである。
つまり単に精子を渡すのではなく、男女の交際を通じて精子を与えるのだ。男性の妄想の中では、女性は自分より少し年上の美女である。むしろ自分から金を出してでも交際したいくらいだ。
しかも女性が交際する気になれば、その時点で15万元が支払われるというのだ。日本円でおよそ200万円である。
交際決定
電話を終えた男性が結果を待っていると仲介業者から電話が入った。
女性があなたのことを気に入ったとの連絡だった。
この時点で男性には15万元が支払われることになったのだ。
しかし巨額の臨時収入には税金の源泉徴収があるという。仲介業者は15万元を支払う前に1%の税金を振り込むように要求した。
1%の税金は日本円でおよそ2万円である。安い。2万円を振り込めば自分の口座には200万円が振り込まれるのだ。
男性は銀行のATMに向かった。
1万5千元を振り込んだ結果は?
ノーマネーでフィニッシュです。
精子詐欺
実は「精子求む」という広告を使った詐欺は、詐欺のジャンルとして定着している。
子供ができない夫婦であるとか、医学的な研究目的であるとか、結婚したくないけど子供は欲しいなどの理由をつけて精子提供者を募集し、手数料や税金という名目で金銭を詐取するのである。
このジャンルが定着しているところをみると、被害に遭う男性は少なくないのだろう。
世の中には非常に怪しい話でも「万が一」があり得る。だから「万が一があるかもしれない」という心理を完全に拭い去ることはできないのだ。
この心理を利用すると、あり得ないような詐欺が成立してしまう。
精子が4500万円以上で売れるという話に引っかかる人がいるのだから、オレオレ詐欺がなくなるわけがないのだ。