太歳の姿
中国漢方の古典である『本草綱目』には、太歳の様子が記されている。それによると太歳にはいくつもの種類があることがわかる。
形は肉のようであり大きな石に付着している。ただし植物やキノコの仲間ではない。頭部と尾部がある動物の一種なのだ。
色は少なくとも赤、白、黒、青、黄の五色ある。どれも光を放っていて、とても冷たいそうだ。
『山海経』によると太歳を切り取って食すと、切り取られた部分はすぐに再生するそうだ。この驚異の再生力は不老長寿の功能と何らかの関係があるのかもしれない。
現代の太歳
太歳は非常に神秘的な存在である。かなり珍しいものではあるが、実は現代の中国で発見が相次いでいる。
その多くは霊薬とみなされていて、非常に高価な値がつくこともあるようだ。
しかし太歳は人類にとって有益な存在だと言い切ることはできない。確かに薬効があると言われているが、それと同時に恐ろしい噂も囁かれているのだ。
太歳を発見した者は死ぬ。
この噂を裏付けるような事件も実際に発生しているのだ。
桃源鎮の怪事件
2010年のことである。山東省泰安市の桃源鎮でその事件は発生した。
村民のKは養鶏場を建設するために自宅の裏庭を整地していた。同じ村の友人であるZとHが作業を手伝っていた。
広い敷地ではなかったため、作業は夕方にはほぼ完了していた。
その時になって隣に住むL老人が訪ねて来た。暦によるとその日は土を掘ってはならない日に当たるというのだ。
Kは暦など意に介さない人物であった。そのせいでLとちょっとした言い争いになったという。
だがその言い争いもZの呼び声で中断された。見ると数人の村人が集まっていた。
肉塊のような物体
人々が集まっているところに近づくと、掘り出されたばかりのピンク色の物体が横たわっていた。掘り出したのはHだという。
Hは「まるで肉のように柔らかいぞ」と言ったが、村人たちは疑いの目を向けた。するとHは鍬でその物体を動かした。
それは確かに弾力のある動きを示した。腐った肉の塊のように見えたそうだ。
誰かが死んだ犬か猫の死体の皮を剥いで埋めたに違いない。
その場にいた人たちはそのように推測したそうだ。サイズや形から判断すれば、そうとでも考えるしかなかったのだろう。
ところがL老人は「だから言っただろう」と大声をあげた。L老人はそれは太歳であり、太歳を掘り当てることは非常に不吉なことだと言った。
L老人にしてみれば暦を無視して土を掘ったから不吉なことが起きたということになる。しかしそれが太歳だと聞いたHの考えは全く違っていた。