ウイグルの食文化
ウイグルの食文化は長い歴史の中で中国の食文化と一部融合している。ウイグルの食文化と中国の食文化は相互に影響を与えているのだ。
ただしウイグル人の多くはイスラム教徒であるから豚肉を食べる習慣はない。この点で中国の食文化と一線を画している。ウイグル人は現在でも独特な食文化を維持しているのだ。
食の禁忌が少ない中国ではウイグル料理は広く普及している。上海にもウイグル料理のレストランがあるし、ウイグル料理の屋台もよく目にする。
ウイグル料理は中華料理に勝るとも劣らない美味なのである。
ナン
nan
نان
馕[náng]
ナンはウイグル人の主食である。ウイグル人のナンは硬めのパンであり、汁気の多い料理との相性が良い。
ただしジャムをぬって食べても違和感はない。焼きたてであれば美味と言ってよいだろう。
インドのナンとは形状が異なり、通常は円盤状で表面には幾何学模様が押されていることが多い。
ゴマや香辛料が振りかけられているものもよく目にする。
このような食品が中国全土で食べられるので、中国人の食生活は多様性に満ちているのだ。
こうした食文化を否定したり消滅させたりするような動きがあるとすれば愚策以外の何物でもない。
ラグメン
leghmen
لەغمەن
拌面[bànmiàn]
スパゲティーくらいの太さの面を茹で、肉、トマト、タマネギなどの野菜を炒めた具とあえた料理。
現地では当然のことながら、中国各地でも人気のメニューになっている。
羊肉と麺との相性がよく、野菜もたくさん使われるので、美味かつヘルシー。
見た目はスパゲティーとよく似ている。
中国ではマルコポーロがラグメンをイタリアに伝えたと信じている人もいる。
しかしイタリアのパスタ料理はラグメンとは独立に生まれたものらしい。
確かにラグメンの材料となる小麦はパスタに使われるデューラム小麦ではないようだ。
麺だけを見るとスパゲティーというよりも日本のうどんに似ている。
ポロ
polo
پولو
抓饭[zhuā fàn]
ピラフと訳されることもある米を使った料理。
羊肉、ニンジン、タマネギを大量の油(羊の脂をつかうと本格的)で炒め、米と水を加えて煮て作る。
現地には黄色いニンジンがあり、これを使うとサフラン色に仕上がる。
羊の肉に抵抗が無い人にとっては天国を思わせる美味。
米を生産しない地域でこのような料理が作られるのは、中国南方の米食文化の影響ではなく、トルコの食文化を継承した結果である。
中国人の中にもポロと炒飯の起源が同じと考える人がいるが、実は別系統の料理なのだ。
ジク・カワープ
zix kawap
زىخ كاۋاپ
羊肉串[yáng ròu chuàn]
羊肉の串焼。日本の「焼き鳥」と同じような感じで炭火焼にする。調理中に塩、クミン、トウガラシなどの香辛料をふりかけて味を付ける。
シンプルかつ美味。屋台料理でもあり、レストランのメニューにも載っている。
もはやウイグルのローカル料理ではなく、中国全土で人気のメニューになっている。
屋台のジク・カワープの肉の大きさは地域によってかなり異なる。個人的な印象では、本場に近づくほど肉のカットが大きくなる傾向がある。
なお、適度に脂身があるほうがおいしい。