殯儀館
中国では人が死ぬと殯儀館(ひんぎかん)と呼ばれる公的な施設で火葬するルールになっている。中国政府は火葬を奨励しているのだ。
このルールは外国人にも原則として適用される。
中国で日本人が死亡した場合も原則上は殯儀館で火葬になるのだ。
ただし例外もある。
火葬せずに日本へ遺体を搬送するというオプションが認められているのだ。この場合には遺体の防腐処理が義務付けられており、手続きは煩雑である。
特に外国人が少ない地域で死亡すると、地元の当局者がルールを知らないため、手続きに非常に長い時間がかかることもある。
現在中国には数十万人の日本人がいるはずだ。
多くの日本人は北京や上海など外国人が多い地域に集中しているが、内陸部の経済発展に伴って外国人慣れしていない地域に駐在する日本人も増えているようだ。
この傾向は今後も続くだろう。
そのような地域で白酒の一気飲みなど、命に危険が及ぶ行為はくれぐれも避けていただきたい。
骨壺販売
殯儀館で火葬となると、遺骨を何らかの容器に納めなければならない。
そこで殯儀館の売店で骨壺を買うことになる。これは必然であり、ほぼ逃れようがない。
この状況を利用した犯罪が摘発されたことがある。
武漢の殯儀館でのことだ。
ある会社が殯儀館での骨壺販売を独占し、いわゆる「ぼったくり価格」で販売を続けていたのだ。
殯儀館は公的施設である。通常ならぼったくり行為、暴利行為など許されるはずはない。
しかし骨壺販売業者は殯儀館の館長を含む当局者に定期的に贈賄し、黙認されていたのだ。なんと11年間も骨壺販売の独占的暴利販売を続けていたという。
骨壺など滅多に買うことはないから、買う側からすればどのくらいが適正価格かわからない。この骨壺という商品の特殊性から発覚がおくれたのだ。
しかも暴利行為そのものが直接摘発されたのではない。
殯儀館の公務員が賄賂を受け取っているとの密告により捜査が開始され、その捜査の過程で暴利行為が発覚したのである。
密告がなければ、ぼったくり価格の骨壺は今でも販売されていたに違いない。
独占業のうまみ
中国では火葬や埋葬に関する業務は電気、水道と並ぶ強力な独占業とみなされている。
電気、水道、葬儀の3業界を水覇、電覇、殯覇と呼ぶことすらあるくらいだ。
これらの業界は独占であるから利用者は言いなりになるしかない。
ただし水道や電気はあまりにも多くの人に影響が及ぶため、利用者から法外な代金を取ることはできない。
しかし殯儀館で発生する諸費用は、相場がわからない上に個々の取引になるから、不当に高額の請求をしても発覚する可能性が低い。
もともと不正が行われやすい環境なのである。
武漢での事件が発覚する以前にも、広州の殯儀館で館長が棺などの代金の10%を賄賂として受け取っていた事件が大きく報道されたことがある。
業者にしてみれば賄賂を払っても、その分は購入者に負担させるのだから損はない。
中国では独占を利用すれば、いかようにも稼ぐことができるのである。