夜狸猫事件
中国のインターネットで夜狸猫事件を検索すると多数のウェブサイトがヒットする。
夜狸猫事件は1980年代に発生した未解決の怪奇事件である。あまりにも規模が大きく不可解な事件であったため、現在でもこの事件への関心が消え去らないのである。
ところで「夜狸猫」はヒョウを意味する中国語であるが、夜狸猫事件は動物のヒョウとは関係がない。ではなぜこの事件が夜狸猫事件と呼ばれているのか?
それについては事件の背景についての有力な意見が関連している。
このことを説明する前に夜狸猫事件とはどのような事件だったのかを説明しよう。
1987年のことである。
陝西省の晶山村で前代未聞の事件が発生した。一晩のうちに全村民が姿を消したのである。
姿を消したのは村民だけではない。村にいた犬も猫も全て煙のように消滅してしまったのだ。
不可解な全村民消滅。これが陝西省夜狸猫事件である。
事件そのものが極めて不気味であるが、問題は全村民が消滅した理由である。
何らかの犯罪が行われたのだろうか?
しかし犯罪の形跡はなかった。この事件を誘拐事件と考えるのは無理がある。ひと晩のうちに村民全員を連れ去ることなど不可能だからだ。
では集団逃亡か?
しかし村民全員が住み慣れた村を捨てて集団逃亡するような理由が考えられない。
仮に集団逃亡だったと仮定すれば、逃亡先の土地で話題になるはずだがその形跡もないのだ。
あまりにも不可解なので宇宙人による誘拐説も提唱されている。
この説は完全に荒唐無稽とまでは言えない。なぜなら夜狸猫事件の直前に晶山村の付近でUFOが目撃されているからだ。
しかし宇宙人が村人全員を連れ去ったとする話を信じる人は少ない。
事件の真相についての有力説
夜狸猫事件の真相については事件発生の直後から中国政府の関与を疑う声がある。
もう少し具体的に言うと、中国政府が人民解放軍を使って村民全員を別の新しい土地に強制移住させたという説が有力なのだ。
国家が用意した新しい土地に移住させたのだから移住先には先住民がいない。移動した先から情報が洩れてこない理由はこれで説明できる。
また村民から情報が流出しないのは、政府による厳しい緘口令の効果だと言われているのだ。
この見解を補強する情報も存在する。夜狸猫事件の直前に蘭州にある人民解放軍の基地で、出動のための大規模な準備が行われていたというのだ。
そもそもこの事件が夜狸猫事件と呼ばれるのも軍の関与と深い関係がある。この軍事プロジェクトのコードネームこそが「夜狸猫」だったというのだ。
ひとつの村の村民全員を一夜で別の土地に移動させる。
このような芸当ができるのは確かに国家権力レベルの動員力をもつ組織しか考えられない。常識的に考えれば夜狸猫事件は中国政府のプロジェクトなのだ。
ただし中国政府も人民解放軍も夜狸猫事件への関与を否定している。
しかしこれは政府が関与していない証拠にはならない。むしろ夜狸猫事件が国家機密に類することを意味している。多くの人はそう考えているのだ。
政府の内部事情に通じた人物の情報によると、夜狸猫事件前後の軍の動きに関する資料は、国家の最高機密に指定されているという。
このことも間接的に政府の関与を裏付けているのだ。
夜狸猫事件が国家プロジェクトであったことはほぼ間違いない。そうだとすると政府はなぜ村民を強制移住させたのか?
この謎こそが夜狸猫事件の核心である。