張君:冷酷な犯罪集団の創設者

常徳での強盗事件

張君の一味が行った犯罪のうち最も有名なのは、洞庭湖で有名な湖南省常徳市での現金輸送車襲撃事件である。

2000年9月1日は週末であった。

午後6時過ぎ、帰宅する人たちで込み合う路上に、覆面をした3名の男が現れ、常德市農業銀行の現金輸送車を襲撃した。

男たちはその場で警備の警察官3名、銀行員2名を射殺したのである。

犯人はカギを奪い、現金輸送車の後部ドアを開けようとしたが、カギが捩じ切れてしまったためにドアを開けることができなくなった。

犯人たちは犯行現場付近に停車していたタクシーの運転手を射殺し、タクシーを奪って逃走した。

逃走しながら犯人たちは路上の人たちを無差別に射撃したため1名が死亡し3名が負傷した。

また逃走中の車に3歳の女児が轢き殺された。

通報を受けた警察は午後7時には逃走に使われたタクシーを発見したが、犯人たちはすでに姿を消していた。

多数の通行人の面前でこれだけの犯行が行われたため、この事件は中国公安の最重要案件(公安部A級一号通緝犯)に指定された。

検挙までの過程

公安には多くの情報が寄せられた。その多くは憶測の類だったようだが、最終的に公安は張君と密接な関係があるとみられる女性にターゲットを絞った。

9月19日の夜10時ころ、Qという女性が渝中区の観音岩という所に旅行用のバッグを持って現れた。

すると濃紺のシャツを着た男が現れ、そのバッグを受け取ったのである。

その瞬間、Qを監視していた3名の捜査員が男に向かって駆け出し、身柄を取り押さえた。それと同時に男が握っていたピストルを奪い取ったのである。

旅行鞄の中には銃弾と手榴弾が入っていた。

捕えられた男は公安が追っていた張君本人であった。

張君は強盗に襲われたと勘違いをして「警察を呼んでくれ、強盗だ」と叫んだそうだ。

捜査員が「我々は警察だ、お前の名前は?」と詰問すると、男は張君であることを認めた。

このニュースが伝わると湖南省のタクシー運転手たちは相互にこのニュースを無線で伝えあったそうだ。